風の噂(うわさ)

コロナ禍の影響で、お茶会やお香会、そして教室等は3月以降お休みになっていました。
7月から一部では再開されているようですが、以前のような形での全面再開には程遠く、感染拡大防止のガイドラインに沿いながらの展開となっています。

前から気になっていた香木に付される香銘について、手元にある市販の諸本や古書の写し、更にこれまで見聞きしてきた記録紙の香銘を徒然なるままに見直してみました。

中でも収めてある香銘が膨大であることから、香銘のデータベースとも云えるのが「香銘大鑑」。
春夏秋冬雑恋の六部門に分けて収めてありますが、雑・恋の重複分を含めて香銘は約2900。

「香銘大鑑」に載っていない香銘は、調べた範囲内では二百数十でしたから、「香銘大鑑」には香銘のほとんどが収められているといっても過言ではないように思います。(「香銘大鑑」に収められている香銘は幕末までのものだそうです。)

明治以降、そして現在も、香木への付銘は連綿と続けられていますから、すべてをリスト化することはまず不可能です。

香銘には想像力をかきたてる、風情あるものが少なくありません。

「風の色」もその一つ。

『茶道雑誌』(河原書店)に一年間連載された森下典子氏のエッセイ「~風の色、水の聲~ 映画『日日是好日』のこと」にも「風の色」を見ることができます。

香銘として、調べた範囲内で使われている「風の〇〇」の慣用は次の七つ。
風の色、風の調、風の便、風の戯、風の使、風の伝、風の音。

『日本国語大辞典』や『広辞苑』には「風の〇〇」として、上記以外にも風の訪れ、風の聞え、風の下水、風の手枕などの慣用が載っています。

ところで、タイトルの「風の噂」。
日常的に用いられているような気がしていますが、この言葉は『日本国語大辞典』や『広辞苑』を引いても出てきません。

ならば、と日本語を学ぶ外国人を意識して編纂された『明鏡国語辞典』で「かぜのうわさ」を検索したところ、ちゃんとありました。
でも、そこには、[誤用]×風のうわさ〔に聞く〕、〇→風の便り〔に聞く〕とあります。

なんと、なんと!

そして、「風の便り」の意味として「どこからともなく伝わってくる消息・うわさ」とあり、[注意]として、近年「風のうわさ(に聞く)」ともいうが慣用になじまない、とあります。

許容範囲内とも云えそうですが、「風の便り」の方を薦めているようです。ハイ。(^^)

そういえば、全国大会の件。
成り行きは「風の便り」に聞いていますが、今年はどうなるのでしょうか…。