旧重陽の節供2020
今日は旧暦の九月九日。
陽数(奇数)で最大の数九が二つも重なるお目出度い「重陽の節供」の日です。
丁度、菊の開花時季でもあることから、別名は「菊の節供」。
花屋さんの店頭には、黄、白、赤、橙など色とりどりの菊花が並んでいますが、庭の鉢植えの菊はやっと蕾が膨らんできたところです。
元々、旧暦の日付で行われていた五節供(人日・上巳・端午・七夕・重陽の各節供)は、明治五年の現行グレゴリオ暦(新暦)への改暦に伴って、日付がそのままスライドして現在に至っています。
名が知れたところでは上巳の節供(桃の節句)は3月3日となっていますが桃の開花には早すぎますし、7月7日の七夕の節供は暑い盛りで秋風には矢張り早すぎるというように、一か月程度時季が合わない時もありますが、新暦・旧暦・月遅れの日付それぞれでフレキシブルに楽しまれているように思われます。
重陽の節供(菊の節供)の日には、平安の昔から宮中では宴が催され、菊を愛で、菊酒を飲み、菊のきせわた【被綿】と称し、前夜に菊の花に真綿を被せて置き、九日に香りと露が移った真綿で身を拭って、延命長寿を願ったとされています。
何れも、菊を愛し菊の露を飲んで不老不死を得た菊慈童や菊水の故事に由来しているようです。
そう云えば、和菓子にも小梨製の赤い菊の上に白いきんとんをのせた「着せ綿」が販売されています。
菊の被綿は、赤色の花に白の被綿、白色の花に黄の被綿、黄色の花に赤の被綿というように、江戸時代には細かな決まりごとができたとか…。
今日は、習いに従って清酒「菊水」で乾杯です。(9月9日にも飲んでいますが…)
菊には多くの異名があるようです。
隠君子・いなで草・花の弟・星見草・千代見草・契草・弟草・少女草・翁草・かたみ草・齢草・大般若・残り草・草の王・山路草・鞠花・金草・秋しくの花・女花・承和の花・百夜草など。※出典『角川大俳句歳時記』
初めて聞く異名もありますが、比較的馴染みがあるのは、花の弟(おとと)、千代見草、翁草(おきなぐさ)、齢草(よわいぐさ)あたりでしょうか…。(^^)
この時季、組香では「菊合香」や「菊花香」が盛んに?催されるようです。
「菊合香」の証歌は菅原道真の歌で、寛平3年(891)頃に行われた「寛平内裏菊合わせ」の時に左方8番目の菊に添えられた歌です。
「菊合わせ」は「根合わせ」「貝合わせ」「香合わせ」といった「物合わせ」の一つで、左方、右方に分かれ10番勝負で州浜台に植えた菊の花に歌を添えて、優劣を競ったものだそうです。
|『古今和歌集』巻第五 秋歌下 272
秋風の吹きあげにたてる白菊は 花かあらぬか浪のよするか
〔大意〕秋風が吹き上げている「吹上」の浜に立っている白菊は、花なのか、そうではないのか、あるいは波が寄せているのか。
※大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)
その昔、和歌の浦の吹上の浜は名所だったそうですが、現在は市街地になっていて「吹上」の地名(吹上〇丁目等々)だけが残っているようです。