亥の月・亥の日・亥の子餅2020

今日は、旧暦十月(亥の月)最初の亥の日にあたります。
この日は「亥の子餅」を食して、無病息災、子孫繁栄を願うとされています。(昔も今も?)

菓子舖「たねや」の「亥の子餅」です。

桂皮シナモンの香りが程よい、美味しいお菓子です。
パッケージもお洒落です。(^^)

亥の子餅は、平安時代から宮中の行事「亥の子の祝い」で、亥の月・亥の日・亥の刻(22時前後)に食すようになったのが始まりとされています。
万病を除くまじないとも、亥(猪)が多産であることにあやかった子孫繁栄のおまじないともいわれています。
古くは、大豆、小豆、大角豆(ささげ)、胡麻、栗、柿、糖など、およそ七種の粉を合わせて作られたと辞書には記されています。

『源氏物語』の「葵の巻」に「亥の子餅」が出てくる場面があります。
香道では、この場面のやり取りから、組香『源氏三習香』の香種の一つに「子(ね)のこの餅」が引かれています。
香の組み方、聞き方などについては、以前blogで記事にした覚えがありますが、「子のこの餅」については『日本国語大辞典』に以下の説明があります。

「(「源氏物語ー葵」で、光源氏と紫上の結婚第二日が亥(い)の日であったために出された「亥の子餅」にひっかけて、翌日の子(ね)の日の結婚第三日に食べる「三日(みか)の餅(もちい)」のことを戯れていったもの) 亥(い)の子の翌日に食べる餅。」

平安時代以降も「亥の子の祝い」は行なわれ、幕府の時代には「亥の子餅」を「玄猪(げんちょ)餅」とも称して、餅を「玄猪包」に包んで臣下に与えたと云われています。
玄猪包の紙の種類、餅の入れ方、そして折り方等についてはちゃんとした決まりがあったようです。
玄猪包については、江戸時代の書『包結図説』に折り方が詳しく載っていて、blogでも写真付きで記事にした覚えがあります。

茶の湯では、玄猪包の意匠を模した「玄猪包香合」があり、この時季に重宝される一品となっています。(本歌は野々村仁清作です)

ところで、旧暦十月(亥の月)最初の亥の日は「炉開き」とされています。
今年は、閏四月があった関係でちょっと遅めの「炉開き」です。

木火土金水の陰陽五行説によると、亥は水性に属し、火災の難を逃れるという言い伝えがあり、茶の湯の炉に限らず、囲炉裏や火鉢、そして炬燵(こたつ)など、炭火を扱うモノはこの日からという風習があるようです。

旧暦の十月(亥)、十一月(子)・十二月(丑)は、陰陽五行説[木火土金水]では水性となっています。

また、上図の八卦の坎が水を象っていることは良く知られています。
香道では火取香炉から香炉に炭団を取った後の灰に坎の卦を引く所作に、また茶道では風炉の灰に坎の卦を引く所作などに、水の卦でもって火を治める願いが込められているように感じます。

今日は「炉開き」。
茶の湯の「炉開き」といえば、お菓子は矢張り「亥の子餅」がお似合いのようです…。(^^)