傾城反魂香
穏やかな、穏やかな、冬晴れの一日。
コロナ禍に揺れる年の瀬をのんびり過ごしました。
慌てず、焦らず、諦めず…。(^^)
Eテレで、年末恒例の京都南座・顔見世歌舞伎「傾城反魂香」(一部)がオンエアされました。
新聞のテレビ番組欄を眺めていたところ、何故か反魂香の文字だけが大きく光り輝いて見えたのでした。(?)
興味がある事柄は、過去に執心したような事柄は、どうやら意識していなくてもパッと視野に飛び込んでくるようです。
「反魂香」については一昨年でしたか、随分とのめりこんでしまった覚えがあります。
愛知県あま市の阿波手の森・萱津神社、そして正法寺に移転安置されている反魂塚碑を訪れたことは良い思い出となっています。
古書「尾張名所図会」の中にある「反魂香」の登場人物、恩雄(やすたか)と藤姫にまつわる哀しい物語は、時が経ってもなお思い新たです。
反魂香関連のblog記事の主なものです。
2018年1月17日「香道一口メモ・112【反魂香】」
2018年1月18日「反魂塚・阿波手の森」
2018年1月19日「尾張名所図会・反魂香の図」
Eテレでオンエアされた「傾城反魂香」は「土佐将監閑居の場」、通称「吃又(どもまた)」の段で、あらすじ等はネット上に掲載されています。
なお、反魂香は『源氏物語』、歌舞伎「本朝二十四孝」等でも取り上げられています。
また、落語「反魂香」では笑いを誘っています。
反魂香は中国の伝説で、『日本国語大辞典』には以下の説明があります。
「(中国の漢の武帝が李夫人の死後、香をたいてその面影を見たという故事による)焚けば死人の魂を呼び返してその姿を煙の中に現わすことができるという、想像上の香。武帝の依頼により方術士が精製した香で、西海聚窟州にある楓に似た香木・反魂樹の木の根をとり、これを釜で煮た汁をとろ火にかけて漆のように練り固めたものという。」
なんだか、おどろおどろしい香のようです。
中唐の詩人・白居易(772~846)は詩「李夫人」の中で反魂香を詠んでいます。
(以下は部分。出典は『新釈漢文大系 白氏文集一』(明治書院)。漢字は常用漢字に変換。)
又令方士合霊薬 又(また)方士(ほうし)をして霊薬(れいやく)を合(ごう)し、
玉釜煎錬金炉焚 玉釜(ぎょくふ)に煎錬(せんれん)し金炉(きんろ)に焚(た)かしむ。
九華帳深夜悄悄 九華(きゅうか)の帳(ちょう)深きところ夜(よる)悄悄(しょうしょう)たり、
反魂香反夫人魂 反魂香(はんごんこう)は反(かえ)す夫人(ふじん)の魂(こん)。
玄宗皇帝と楊貴妃の哀話も途中で詠まれていますが、この詩「李夫人」が云わんとするところは最後の部分でしょうか?
生亦惑 死亦惑 生きても亦(ま)た惑(まど)ひ 死しても亦(ま)た惑(まど)ふ、
尤物感人忘不得 尤物(ゆうぶつ)は人を感ぜしめて忘(わす)れ得(え)ざらしむ。
人非木石皆有情 人は木石(ぼくせき)に非(あら)ず皆(みな)情(じょう)有り、
不如不遇傾城色 如(し)かず傾城(けいせい)の色に遇(あ)はざらんには。
[通釈]には、「生きていても惑わされ、死んでからもまた惑わされ、尤物(絶世の美女)は人を惑わして忘れられなくしてしまう。人は木石ではなく、誰もが情というものを持っている。それならいっそ傾城の美女には出会わないほうがましだ。」とあります。
げにげに。
でも…。!(^^)!
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プランターで「菜の花」ならぬ「菜の葉」が巨大化しています。
実生の株ですが、葉がこんなに大きくなるとは…、びっくりです。
時々、葉を摘んで「おひたし」にしていただいています。