奈良に武蔵野!

志野流香道の機関誌に「目からうろこ」の記事が載っていました。

組香「若菜香」に出てくる地名「武蔵野」は奈良にあるというものです。

「若菜香」は香六種[美豆野・烽火野・交野・朝沢小野・武蔵野・若菜」からなる組香で、五つの野のどこかで雪の中、春の若菜摘みに遊ぶ姿をイメージしながら、客香の若菜を聞き当てようというものです。

野の一つに挙げられている武蔵野といえば、誰しもが真っ先に関東の武蔵野を思い浮かべると思います。
他の四つが大阪、奈良の地名であるだけに、どうして一つだけが関東の地名?と以前から不思議に思っていました。
ところが、今回の記事で奈良に武蔵野と呼べるような地があったことが解り、目から鱗がポロポロと落ちる思いでした。(^^)

記事では、奈良・春日野にある老舗の宿のホームページから、武蔵野の名の由来が紹介されています。

早速、ネットで宿を調べたところ、直ぐに「古都の宿・むさし野」であることが解りました。

宿のHPには「むさし野の謂れ」が記してあります。

「奈良にあって 何故むさし野と言うか。」との書き出しで始まり、平城京に都がある頃、関東のむさし野から小野美作吾という役人が宮使いでやってきたが、流行り病で命を落とし、亡骸は関東のむさし野にという故人の頼みに反して、近くの若草山の麓に葬ったところ、祟り幽霊となって彷徨ったため、この地を「武蔵ケ原」と改め、霊の怒りを鎮めたように記してあります。

そして、その時の当主が、その地の名前「武蔵ヶ原」から名をとって「むさし野」と屋号をつけたのだそうです。

幕末三舟の一人である山岡鉄舟もこの宿を贔屓にしていて、酒代の代わりにしたためた「武蔵野楼」という横物が、今もロビーにかかっているとHPには記してあります。

この横物の写真は、宿のインスタグラムの中で見ることができますが、スケールの大きい見事な墨蹟です。

コロナ禍が落ち着いたら、訪れてみようかな……。(^^)

これで、組香「若菜香」の「武蔵野」は一件落着です。

尤も、武蔵野が仮に関東の武蔵野であったとしても、若菜摘みのイメージが損なわれることは無いようにも思います…。

組香の作の多くは江戸時代と聞いていますが、本当によく考えて作られていると思っています。