鏡開き・二見浦

暦を見ると、今日は「鏡開き」の日。
御多分に洩れず、元は旧暦一月十一日の行事です。

辞書によると、「開き」は「割り」の忌み詞とあります。
正月に供えた鏡餅をおろし、二十日の小豆粥に入れて食べていたのが、後に十一日の仕事始め(蔵開き)に行うようになったのだそうです。(武家時代には、男子は具足に、婦女は鏡台に、鏡餅を供えたようです)

日本国語大辞典には「二十日に祝うのは、男性は「刃柄(はつか)」、女性は「初顔(はつかお)」にかけたもので、仕事始め(蔵開き)の十一日に行うようになったのは徳川家光が慶安四年(1651)四月二十日に没したことによるという。」と記してあります。

幕府三代将軍の月命日に祝い事をするとは何事ぞ…、といったところでしょうか。

今年は、小豆粥ならぬ善哉を食しました。
ハレの日の餅を入れ、邪気を払う赤い小豆が入った美味しい善哉でした。

これで、今年一年は大丈夫です。

でも、お粥じゃないから御利益は半分? (^^)

香道関係の古書にあった和歌です。

夕月夜おぼつかなきを玉くしげ 二見の浦はあけてこそ見め

「二見の浦」って、伊勢の「二見が浦」のこと?

何の迷いもなく『日本国語大辞典』で(ふたみのうら)を引いてみました。

ふたみのうら【二見浦】
①兵庫県豊岡市城崎町上山(うやま)、円山川下流の景勝地。歌枕。
*古今(905-914)羇旅・417
夕づくよおぼつかなきをたまくしげ ふたみの浦はあけてこそ見め(藤原兼輔)

城崎温泉の近くの「二見浦」です。

辞書にはもう一つ、②⇒ふたみがうら【二見浦】があげてあります。
ふたみがうら【二見浦】
「三重県度会群二見町の海岸。白砂清松の景勝地で、古くは沐浴斎戒の霊地。南端に二見興玉(おきたま)神社があり、その沖合にある夫婦岩はさらにその沖合の興玉神石を拝する岩門として自然の鳥居を形づくっている。」

こちらは夫婦岩で有名な伊勢の「二見浦」です。

歌にある「二見の浦」が但馬の城崎温泉の近くを指しているとは、意外どころかびっくり仰天ものでした。
mapをみると、城崎温泉の近くに確かに「二見」の地名があります。

和歌を調べてみました。

『古今和歌集』巻第九 羇旅歌 417
| たじまのくにのゆ(湯)へまかりける時に、ふたみのうらという所にとまりて、ゆふさりのかれいひ(乾飯)たうべけるに、ともにありける人人のうたよみけるついでによめる  ふじはらのかねすけ

ゆふづくよおぼつかなきを玉匣 ふたみの浦は曙てこそみめ

〔大意〕夕方の月の出るころの夜は様子がはっきりしないから、くし箱の「蓋」と「身」の内側は箱を開けて見るように、「二見の浦」は夜が明けてから見よう。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)/大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

地名は難しいです。ハイ。(^^)