「節分香」再考

先日2月2日は季節を分ける「節分」に因んで、組香「節分香」を取り上げました。
この組香は志野流香道先代家元・蜂谷幽求斎宗由宗匠御試作のものと聞いています。

◆香三種
青として 二包で内一包試
黄として 三包で内一包試
赤として 四包で内一包試

◆聞き方
試みを終えた後、出香六包(青一包・黄二包・赤三包)を打ち交ぜて炷き出された香が何であるかを答えます。
全当たりの人には、点数の所に「福は内」と書かれます。

シンプルな組香です。
「節分香」ですから、青・黄・赤と聞けば否応なしに青鬼・黄鬼・赤鬼をイメージしてしまいます。
全当たりが「福は内」となっていれば尚更です。

でも、何故に青・黄・赤の順?

何でもないことのように思われますが、熟考の上で創作された組香ですから、意味のない筈がありません。
思えば、これは「五色(ごしき)」の順になっています。
出香数一、二、三包も五色の順の数と考えられます。(鬼がたくさん…)

お香は佛教と共に伝来していますが、五色は青・黄・赤・白・黒の順になっています。(正色です!)

尤も、寺院で用いられる五色の垂れ幕は、青を緑に、黒を紫にしてあります。
香道では、七夕香の際に五色の糸巻を飾ったりしますが、並べる順は寺院の垂幕同様に緑・黄・赤・白・紫の順になっています。

「節分香」はシンプルな組香と云えそうですが、とてもよく考えられていると思います。(^^)

ならば、色(鬼)をもっと増やして、青・黄・赤・白・黒の五色すべてを香種にしたら?、更に出香数も一、二、三、四、五包にしたら?、と思わないでもありませんが、ピッタリの格言がありました。

「過ぎたるはなお及ばざるが如し」

以前、限られた範囲内ですが、組香のデータベースを作成したことがあります。
早速、「節分香」と同じく香種3、出香数6でソート(並べ替え)して、各香包の数を見てみました。
なんと、なんと!
「節分香」の香の組み方は、他に同じものがなく、唯一無二のものでした。

驚きました…。

これまで「節分香」をシンプルな組香と安易に思っていましたが……撤回です。m(__)m
シンプルではありますが、重複しないようによくよく調べ、熟考した上で作られた組香であることがよく解りました。
考えてみれば、新たな組香を世に問うわけですから、当然すぎることなのかもしれません…。

ことのついでに、香種5、出香数15でソートして、各香包数を見てみました。
青・黄・赤・白・黒ではありませんが、香種として一(1包)、二(2包)、三(3包)、四(4包)、五(5包)とする組香に「三千年香」がありました。
更に蛇足ですが、五色を題材にした「五色香」は香種として青・黄・赤・白・黒の五色に間色の紫を加えた香六種となっています。

こうしてみると「節分香」は実に程よいです。
「節分香」万歳!といった気分になりました…。(^^)

※公園のアオモジ【青文字】の花芽です。指ですりつぶすとレモンの香りがします。