シモツケ【下野】

一昨日は(から)二十四節気の一つ「小満」。

江戸時代の解説書『暦便覧』には「万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る」とあります。
げにげに(実実)です。

長年愛用している『新暦・旧暦カレンダー』には、具体的に記してあります。
「万物が次第に長じて、天地に満ち始める頃である。野山の緑はいちだんと濃さを増し、麦の穂が生長して稔りの時が近づく。南の方から梅雨が始まり、多くの地方で田に水が張られて田植えが始まる。」

確かにそういう時季です、ハイ。(^^)

シモツケ【下野】が咲き出しています。

茶の湯には「七事式」なる芸事があります。
その中の一つ「且座(しゃざ・さざ)」には香木の香りを聞くという所作が含まれています。

表千家・裏千家のテキストには一通りのことは書いてありますが、矢張り細かいノウハウとなると、「餅は餅屋」で香道を学ぶのが一番と思い、香道を習い出したのは一昔前のこと。

これまで、いろいろな組香を通して基本的なことを学んできたように思います。
香炉をつくる、香りを聞く、香りを当てるといった規矩作法の習得を始めとして、組香の組み方、バックグラウンド、そして詩歌などに大きな魅力・面白さを感じて、今に至っています。

今でこそ、ものの本には組香の目録が載っていますが、数年前までは秘してこそ花の如く、全貌はオープンにされなかったように感じています。
尤も、その気になって調べれば、分からないことではなかったようですが…。

何の脈絡もなく、ふいと思い出したのが古書に書かれていた「夏虫香」。
名古屋市史に載っていた「外組」の目録中にも記されていた組香ですが、本文中にはその名が見当たらず「何故?どうして?」と不思議に思っていました。

現在、ものの本に載っている志野流組香目録中に「夏虫香」は載っていないので、「なるほど、きっと単なる筆の誤りだったのだ…」と割り切り、すっかり忘れていたものです。

「夏虫」は『広辞苑』によると、
①夏出る虫の総称
②灯蛾など、夏の夜灯火に慕いよる虫
③蛍の称
④蚊、一説には蝉の称
⑤夏季、小児に生ずる瘡(かさ)
などが挙げてあります。

「夏虫香」の記載を求めて調べてみたのは、『香道蘭之園』、『香道賤家梅』、『香道籬之菊』の三点。
いずれも志野流の聞書のスタイルとは異なる書き方の香書です。

「夏蟲香」の記述は『香道賤家梅』の中にありました。
聞書を眺めてみると、夏虫はとして組まれています。

納得です。!(^^)!

『夫木集』の中に収められている寂蓮法師の歌が引き歌になっていました。
夏むしの身をともしける光こそ 闇にまよはぬしるべなりけれ

組香自体は「十種香」と同じで、一、二、三、客で組まれていますが、聞き方が少し変わっていることに加えて名目がやたら多く、執筆役の方が苦労しそうな組香となっています。

組香「夏蟲香」の聞き方等については、またの機会にしたいと思います。

それにしても「外組」の目録中に記してあった「夏虫香」は、一体何だったのだろう…と今でも謎です。

古書の目録には丁度88組載っていましたから、「これはハチヤの謎かけ?」などと、あらぬ妄想まで抱いていたのが、今では懐かしい思い出となっています。

一昔前のお話です。