畳の事情

今日の名古屋の最高気温は31.8℃、突然の真夏日となりました。
まだ身体が暑さに慣れていないからでしょうか、なんだか力が入らないままの一日でした。
明日も最高気温32℃の真夏日が予想されています。

ツバキ科の夏椿=娑羅(しゃら)の花が咲いています。
一日花で、ポタリと落ちる姿には何となく潔さを感じます…。ホント?

娑羅の花が咲き出すと、いよいよ夏が来たことを実感します。

今月の『茶道雑誌』(河原書店)6月号に、「伝統の茶室畳を、今に伝えて」と題する記事が載っていました。
近年の住宅事情に合わせた畳の製作例が紹介されていて、とても興味深いものでした。
写真と共に、文末の部分を引用します。

「最近、関東を中心に注文が増えているのが、マンションなどで床に炉を切ることのできない部屋に設置できるIHヒーター置炉専用置き畳だ。IH置炉の高さに畳の厚さを合わせたので、まるで炉を切ったのと同じような作法で柄杓の扱いもできる。半畳サイズで軽量新素材を使用しているため、使用しないときは積み上げて片付けておける。それでも仕様は、あくまで京間だ。」

写真と照らし合わせながら推測すると、マンションのフローリングの上に京間半畳サイズの畳を敷いて、床は「置き床」の仕様になっています。
そして、炉畳も半畳でIHヒーター置炉の大きさ、高さに合わせて隅が切ってあることが解ります。
IHヒーター置炉は、茶道具のカタログを見ると一尺四寸角、高さは14㎝ほどとなっています。

「えっ? 厚みが14㎝の半畳畳を敷く…?」

文中には、半畳サイズで軽量新素材とありますから、例えば下の方はスチロール系の分厚い軽量素材にして、その上に藁床、そして表面はイグサの畳表という構造なら、感触は従来のイグサ畳と全く変わらないものができそうです。(推測です!)
加えて、半畳サイズなら、厚み14㎝の物もなんとか持ち運びができそうです。

現代の住宅事情に合わせた、機能的な茶の湯畳といったところでしょうか。(^^)

【備忘録】
①畳
畳のサイズは京間、中京間、江戸間(関東間)で異なり、各畳の長辺のサイズは以下の通りです。(短辺は長辺の半分)

京 間…六尺三寸=191㎝(一尺は30.3cm)
中京間…六尺
江戸間…五尺八寸=176㎝

京間と江戸間では畳一枚の長辺が五寸(15cm強)も違っていることから、同じ8畳間といっても京間と江戸間(関東間)では広さが随分違うことになります。
今どきの住宅建築は、京間の数寄屋造りは別として、一般的には江戸間仕様が多いようです。

②炉
炉の大きさは一尺四寸角と決まっています。
そこにはめ込む炉縁(ろぶち)の寸法は一尺四寸角、厚みは二寸二分となっています。
IHヒーター置炉は炉縁の厚みも含めて14㎝ほどとなっていますが、上記の半畳畳は厚みを合わせて作ることから、炉縁上面と畳面が同一で、柄杓の扱いに違和感は生じないようです。

従来の固定概念にとらわれず、部屋の仕様、部屋の大きさに合わせて畳を作るとなると、難しいことは何もありません。

フレキシブルな発想の大切さを思い知らされた今回の記事でした。(^^)