暦日「入梅」

今日は日本独自の暦日である雑節「入梅」です。
黄経が80度となる日で、暦上の梅雨入りとなっています。

尤も、東海地方は先月16日に既に梅雨入り宣言が出されていて、平年より三週間も早い梅雨入りが話題になっていたところです。
今週は月・火・水・木と30℃超えの真夏日が続いた上、週末まで雨は降らない見込みとなっていて、「梅雨の中休み」(梅雨のずる休み?)といったところです。

旧暦では、昨日から五月。
この時季、特に好んで行われる組香として「五月雨香」があります。

香は四種で、
春として 二包で無試
夏として 同断
秋として 同断
冬として 同断
五月雨として 二包で内一包試

五月雨の試みを聞いた後、出香九包打ち交ぜて炷き出しますが、五月雨は正聞き、春・夏・秋・冬の香はつるびで聞きます。
付される名目、証歌などについては、2020年6月10日付ブログ「梅雨入り」であれこれ記した覚えがあり、今回は省略します。
なお、引かれている歌については出典が依然不明のままです。(その後、調べていませんが…)

村雨に時雨はる雨夕立の景色を空にまかふ五月雨

五月雨で思い出すのが「五月雨日記」(「五月雨之記」)。
文明十一年(1479年)五月十二日に東山殿で執り行われた六番香合(こうあわせ)が記されています。

香合(こうあわせ)は物合(ものあわせ)の一つで、歌合、根合、菊合などと同じく、左右に分かれ物の優劣を競う催しです。

「五月雨日記」には、香合(こうあわせ)の優劣の判定について次のように記してあります。

「香の良し悪し勝負定まりて、さて香の名の付けざま、詩歌・物語・催馬楽・管弦の譜ようのものなりとも、取りどころ其の良し悪しあり。躰なき言葉などにて名づくるは、弱きによりて悪しとす。左右互いに心の底残らず言いて、勝負を究め、香匂いすがり(末枯)までも勝ちたりというとも、名負けたらば持(もち)なるべし。香負けたりと言うとも、名勝ちたらば持(もち)なるべし。香のよろしきより、名のよろしきを誉とす。香良く名も相具したらば、言うにたらぬ勝ちなるべし。香に古(いにしえ)よりの名ありて、例えば蘭奢待など言うとも、其の香合に臨むときに、新しく名を付けて出だす。香合の法なり。幾度の香合に、同香を出すと言うとも、名をだに新しくせば、作者の手柄なるべし。一座に同香出だす事は制なるべし。」

香が良く銘も良ければ文句なしの勝ちですが、香が良くても銘が劣っている、あるいは香は劣っていても銘が優れている時は持(もち)(引き分け)と云っています。
更に、香のよろしきより、銘のよろしきを誉とするとまで云っています。

香銘の大切さは、教場や香会で行なわれる組香の際に、情景を思い浮かべる縁として、紡がれる詞に胸を躍らせることがあり、その都度実感しているところです。

茶の湯における、茶杓の銘などと通じるところがあるように思います。

六番香合(こうあわせ)の結果は次の通りです。

<一番>
左 とこの月 (勝)
右 山下水
<二番>
左 雪のそで (持)
右 かはらや
<三番>
左 しほやきごろも (持)
右 こりずま
<四番>
左 春光 (持)
右 うらふぢ
<五番>
左 たまみず (勝)
右 萩の戸
<六番>
左 ねぬよの夢
右 やまぶき (勝)

上記の内、『香銘大鑑』にその名が見当たらないのは、「とこの月」「しほやきごろも」「こりずま」の三つです。
床の月、塩焼衣などは載っていてもよさそうな銘なのですが…。

確かに、香銘は無尽蔵です。ハイ。(^^)

ともあれ、愛知は依然として新型コロナvirusによる緊急事態宣言の最中です。
ここ数年、毎年のように聞いてきた「五月雨香」ですが、今年も聞き逃すことになるかもしれません。

また来年!です。(^^)

公園に咲いていた白花のシモツケ「下野」です。
白花は初めて見ました!