ゲンノショウコ

今日は二十四節気の一つ「寒露」。
暦には「朝夕の冷え込みはいちだんと増し、秋草の葉に冷たい露がつくようになる」とあります。
でも、まだまだ気温は高めで、葉に露を宿すのはもう少し先のことになりそうです。

また、七十二候では「鴻雁来」(こうがんきたる)。
雁が北から飛来し始める、と同暦には記してあります。
「雁行」を目にする日は案外近いのかもしれません。

公園でゲンノショウコ【現証拠・験証拠】が紅紫色の花を咲かせています。

古くから薬草として知られ、茎・葉は下痢止めなどに効果てきめんということから「現証拠」と名付けられたとか…。
初めて気づきましたが、道端に普通に生える植物のようです。
花の色には紅白二つの型があるようです。

「四季」で楽しむ組香④ 【草花香】

香名が[春・夏・秋・冬]の四種となっている組香は四つ。
【四季音信香】、【替寝覚香】、【八景香】、そしてこの【草花香】です。

◆香四種
春として 四包で内一包試
夏として 同断
秋として 同断
冬として 一包で無試

◆聞き方
試みを終え、本香十包打ち交ぜて炷き出し、試みに合わせて札を打ちます。
十種香の札を用い、一炷開きで当りばかりを記す盤物となっています。

名所香の盤を用い、花を立てるようですが、花は新たに作る必要はなく、挿枝袋の十二ヵ月の花を借りて良いようです。
盤上の花の進み方、戻り方などについてはルールが定めてあります。(省略)
花の名は当季を上座とし、例えばとして、次の草花が挙げてあります。

春:桜草、かきつはた、やま吹、すみれ、たんほゝ
夏:ゆり、なてしこ、夏きく、あふひ
秋:あさみ、萩、きゝよう
冬:水仙

今どき、上記の花を新たに作るとなると超大変です。
以前、挿枝袋の十二ヵ月の花の製作費を耳にしたことがありますが、とても高価でした。
芸術品ともいえる希少価値を考えると、値が張るのは致し方ないことです。(^^)

この組香は盤物となっていますから、盤が無くては話になりません。
もし、記紙を用いて行うとすれば、これは「十種香」と同じです。
それでは花も風情もないとしか言いようが……。m(__)m

◆記録紙(札の場合)一部略
| 二二一二三一一三三ウ
名 二 一二三  三三  六
名 二二一二三一一三三ウ 全

◆メモ
挿枝袋の十二ヵ月の花(基本は旧暦)
一月 梅
二月 桜
三月 藤
四月 牡丹
五月 杜若
六月 百合
七月 朝顔
八月 桔梗
九月 菊
十月 紅葉
十一月 水仙
十二月 椿

杜若、百合、桔梗、水仙などは「草花香」の花の例にもある花です。
春夏秋冬それぞれに三種で計十二種ありますから、確かに代用は十分可能と云えそうです。(^^)

ただ、「草花香」の花の例の中で、「かきつはた」が春になっているのは気がかりです…。

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※「名所香」の盤は三組盤の一つ。
三組盤は「競馬香」「名所香」「矢数香」の三種の盤物を一つの箱(盤として使用)の中に収めたもの。

出典:「香り かぐわしき名宝展」(2011)図録より松隠軒蔵「三組盤」

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【追記】(10月11日)
「草花香」の花の例として「かきつはた」は春にあげてあります。
辞書や俳句歳時記では、杜若は夏の季語となっていて、イメージ的にも矢張り初夏の花といったところです。

三河の国、八橋のカキツバタは、『伊勢物語』の九段で在原業平が「らころもつつなれにしましあれば るばるきぬるびをしぞおもふ」と「かきつはた」を折句にして詠んでいることで知られています。

愛知県・知立市の無量寿寺境内にある八橋かきつばた園では、毎年4月末から5月中旬にかけて「史跡八橋かきつばたまつり」が開催されていて、五月上旬が一番の見ごろとなっているようです。

旧暦で一月~三月は春とされています。
現行の新暦では、カキツバタが花開く4月末・5月上旬が旧暦の三月中であることは珍しいことではありません。

カキツバタを詠んだ歌が「春」の部に入っている勅撰和歌集があります。

|『金葉和歌集』巻第一 春歌
|百首の歌の中に杜若を   修理太夫顕季(あきすえ)
東路のかほやが沼の杜若 はるをこめてもさきにけるかな

「草花香」花の例の春に「かきつはた」があることに目くじらは立てなくても良いようです。(^^)