むめ一輪

むめ一輪一りんほどのあたゝかさ  嵐雪

公園にある紅梅[未開紅]が他にさきがけて二、三輪開花していました。
そろりそろりと観梅の季節です。

先日22日の新聞には、福岡県の太宰府天満宮にある「飛梅」が五輪咲いたとの記事が載っていました。
大宰府に左遷された菅原道真を慕って、京都から一夜にして飛んできたとされる、あの八重咲白梅です。

『日本国語大辞典』には、梅の[語誌]が載っていました。

(1)万葉仮名では「宇米」「有梅」「烏梅」などと表記され、平安時代になると「むめ」と記されることが多い。

(2)「万葉集」では、梅の歌は、植物としては萩に次いで多く、桜をしのぐ。万葉歌の梅はすべて白梅と解されるが、平安時代には、「木の花は、濃きも薄きも紅梅」〔枕三七〕など紅梅に言及する例も登場し、「和漢朗詠集」にも梅・紅梅双方の項目が設けられる。

「万葉集」の中に詠まれている植物は約160種とか…。
ハギが最も多く、次いでウメ、そしてマツ、タチバナ、サクラと続くようです。

一月下旬のこの頃、香道では梅に因んだ組香も行なわれるようです。
「梅烟香」・「梅花香」あたりでしょうか。

【梅烟香】
◆香三種
梅として 二包で内一包試
烟として 同断
香として 一包で無試 *香(かほり)…客香

◆聞き方など
試み香を終え、出香三包打ち交ぜ炷き出します。
聞き終わりて試みに合わせ記紙(名乗紙)に書き付けて出します。
一人聞きには加点があるようです。

※記録
|  梅 香 烟
|名 梅 烟 香  一
|名 梅 香 烟  全

【梅花香】
◆香三種
一として 四包で内一包試
二として 右同断
客として 一包で無試

◆聞き方
試み終わりて、一・二・客の七包打ち交ぜ、二包除き残り五包を炷き出します。
後出香として、残り二包の内一包取り炷き出します。
[証歌]
梅の花それともみえす久方の あまきる雪のなへてふれれは  (古今 人丸)

記録紙の聞きの中段には、聞きに応じて歌の句を用いた名目が書かれるようです。(略)
全当りの人には下段、数のところにと書かれます。

※証歌
|『古今和歌集』巻第六 冬歌 三三四
| 題しらず   よみ人しらず
梅花それとも見えず久方の あまぎる雪のなべてふれれば
この哥ある人のいはく、かきのもとの人まるが哥也
〔大意〕梅の花はどれがそれだとも見きわめられない。かき曇る雪が一面に降っているので。
*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

ところで、梅に取り合わされる鳥は、花札にもあるように鶯。(花札では10点)
梅の花と共に、春を告げる鳥として、和歌にも数多く詠まれています。

香道にも、ウグイス【鶯】と呼ばれている香道具があります。
組香などで、開いた香包を挿しておく細長い金属棒です。
このウグイス【鶯】の謂れは色々あるようで、志野流香道先代家元・蜂谷幽求斎宗由宗匠の「香道の心得(如月)」には、次のように書かれています。

「香具の中にまたの名を〝鶯〟と称し、答の記してある出香紙を順序の変らないよう差し止める細い金属製の〝香串〟があります。この謂れを探ってみますと、出雲大社の、年に一度開かれる鶯門を神が通られるとのことから、神に紙をかけたとか、宇佐・熊野・伊勢・住吉の四神の頭字を取り、同じく神に紙をかけて、もじったものといわれたり、また、東福門院が―あかなくにをれるばかりぞ梅のはな香を尋ねてぞうぐひすの啼く―の古歌から名付けられたともいわれています。そのほか一、二の説もありますが、その思い付きにはなかなか興の深いものを覚えます。」

出雲大社の鶯門にはとても興味があります。
コロナ禍が収まってから、機会があれば一度訪れてみたいものだと思っています。(^^)

そう云えば、茶道・裏千家の茶箱・月点前では、金属棒を逆U字型にしたウグイスを器据に挿して茶筅立てに用いていましたネ。
懐かしい~~。(^^)

一昨日、公園を訪れた際に梅の木にとまっていたのは鶯ならぬヤマガラ【山雀】でした。