旧暦卯月・卯月香

青葉若葉が目に染みる時季となりました。
今日、5月4日は「みどりの日」。
空を見上げれば雲一つない青空、そして穏やかな風がゆったりと流れる暖かい一日でした。

YouTubeで半年ぶりに「上高地ライブカメラ」を見てみました。
あちらも快晴で、ひたすら美しい映像が流れていきます。
残雪の残る穂高連峰をバックにして、河童橋を行き来する大勢の観光客の姿がありました。
ちょうど今頃、かって岳沢のデブリを超えて、西穂の稜線に沢からダイレクトに登ったことを懐かしく思い出します。

今日5月4日は旧暦の四月四日。
先月に続いて、今月5月も丁度ひと月遅れの旧暦となっています。(新月、満月の日が直ぐ解かるのが最大の利点?)
珍しいことのような、いやいやそんなに珍しいことではないような、調べていないので分かりませんが、印象としては後者でしょうか…。(^^)
勿論、数年単位での話ですが…。

旧暦の四月(卯月)は季節としては夏。
夏と云えば…、頭に浮かぶものは多々ありますが、更衣、新樹、卯の花、葵、ホトトギスなどは何れも初夏を代表する風物となっています。
そんな初夏の風物を題材にした組香に、大外組の「夘月香」があります。
2017年5月6日(なんと5年前!)に「夘月香」を取り上げていました。

◆香は六種
一を更衣として 二包で内一包試
二を新樹として 同断
三を卯花として 同断
四を葵 として 同断
五を忍音として 同断
六を客 として 一包で無試

◆聞き方
①一~五の試みを聞いて香りを記憶します。
②出香は、一から五の各一包計五包を打ち交ぜ、内一包だけ取り出し、これに六(客)を加えた計二包を炷き出します。

二炷の出により、ウ(客)の香を夫々の名目にして書きます。
更衣と客ならば ひとへ(単)
新樹と客ならば 深みどり
卯花と客ならば 白たへ(白妙)
葵 と客ならば 小車
忍音と客なれば 初郭公

点数の所には、全当たりの人には卯月、客のみ当りには立夏、季のみ当りには首夏と書くことになっています。

◆記録
| ウ   忍音
名 初郭公 忍音  夘月 叶
名 小車  葵   立夏 一
名 新樹  深緑

香木に付けられた名[更衣、新樹、卯花、葵、忍音]そして名目[ひとえ(単)、深緑、白妙、小車、初ホトトギス]は初夏の代表的な風物詩となっています。

・平安の昔から、夏の季節となる四月は、合わせ物からひとえ(単)へと更衣の時季。
・新樹は若葉・青葉の新緑の樹木。
・真っ白な卯の花が咲き乱れるさまは古来、雪、月、波、雲などにたとえられています。白妙という表現はぴったり。
・葵は二葉葵の俗称で、平安時代から京都・葵祭の神事に使われています。小車は牛車のことで、『源氏物語』にある葵の上と六条御息所の葵祭見物の「車争い」を掛けた名目は絶妙。
・ホトトギスもウグイス同様、鳴き始めは上手に鳴けず、声を潜めて鳴くことから忍び音。

ところで、「季のみ当たりには首夏(旧暦四月の異称)と書く」とありますが、出香は客と季の香の二炷なので、季が当たればもう一炷の客は当然当りの筈です。
ですが、答えを書く際に勘違いをすることが無きにしも非ずです。
その為に、季のみ当たりの名目が用意されているのかもしれません…。(^^)

卯花は空木(うつぎ)の花。
庭のバイカウツギ【梅花空木】の花が一輪咲きました。
とても良い香りがします。