秋の大茶会

昨日3日、名古屋・八勝館で4年ぶりに開催された「秋の大茶会」に出かけました。
11月だというのに全国的に季節外れの暑さとなり、名古屋の最高気温は35.7℃の「夏日」。
汗ばむほどの陽気でしたが、秋晴れの穏やかな好天に恵まれたのは何よりでした。

志野流香道のお席の掛物は奈良の松源院・泉田玉堂和尚の「香」の一字。
部屋の柱には邪気を払う「霊絲錦(れいしきん)」が掛けられ、箱の中には数種類の香料がはいっているとか…。
組香は秋によく行われる定番の「月見香」でした。

◆香は二種
月として 四包に認め内一包試
客(ウ)として 三包に認め無試

◆聞き方
試みを終えた後、出香六包を打ち交ぜ、内から三包を取り出し炷き出します。

◆記録
記録紙には、銘々の聞きを以下の名目に書き換えます。
月月月と聞くは 十五夜
月月ウと聞くは 待宵
ウ月月と聞くは 十六夜
月ウ月と聞くは 水上月
ウ月ウと聞くは 木間月
ウウ月と聞くは 残月
月ウウと聞くは 夕月夜
ウウウと聞くは 雨夜

11月3日は旧暦の九月二十日。(前夜の月は十九日の寝待月)
朝方、八勝館へ向かう途中、空を眺めれば白く輝く「残月」が西方の空にくっきりと見えました。
名目「残月」だけが、明け方・明けてからの月見で、その他は夜の月となっています。
残月は「ウウ月」のウを空の明るさになぞらえての解説が一般的ですが、十六夜(ウ月月)以降も月が昇るのが日ごとに遅くなることから、(ウウ月)は明け方に月が沈まずに残って見える「残月」ということになりそうです。うべなるかな!

夕月夜(月ウウ)も、十四日の待宵(月月ウ)よりも以前の月(例えば、夕方見える三日の三日月)と考えると、夕月・夕月夜となりそうです。
ざっくり言えば、月が朝方見えるのは残月、夕方見えるのは夕月・夕月夜といったところでしょうか…。

床脇には龍田川錦蒔絵の硯箱が飾られていました。
同席のお一人が「ちはやぶる…」と呟かれました。(古今集・秋下!)

ちはやぶる神世もきかずたつたがは から紅に水くくるとは <在原業平>

約20人のお席でしたが、大寄せの茶会・香会には知識が豊富なお方が必ずいらっしゃるようです…。

煎茶席は庭園での煎茶道・売茶流のお席でした。
高取友仙窟お家元直々の解説付きのお席はくつろいだ雰囲気で、大勢の方と共に床几に腰かけ、お菓子と一煎の煎茶を楽しみました。
「写真はどうぞどうぞ」とのことでしたので立礼卓のお道具をパチリと一枚。
色・形が様々の華やかなお道具が並び、いつもながら楽しませていただきました。
特に、白泥透入りの「涼炉」(高浜・伊藤公洋)がひときわ印象深く目に留まりました。

朱傘には「採菊東籬下」の扇面が掛けられていました。
陶淵明の詩「飲酒二十首」の「其の五」の一句で、秋の茶席で掛けられることが多いです。

………
採菊東籬下
(菊を採る東籬(とうり)の下(もと))
悠然見南山
(悠然 南山を見る)※南山=廬山
………

濃茶席は有名な「御幸の間」「残月の間」を用いて、表千家の担当となっていました。
展観席となった残月の間は、表千家・残月亭の写しで畳二畳の床が最大の特徴となっています。
利休屋敷の二畳の床で秀吉が突き上げ窓を通して残月を眺めたのが由来とか…。
真っ先に目に飛び込んできたのは、目にも鮮やかな白い寒牡丹!、今にも開きそうな絶妙な加減の牡丹に目を見張りました。
この時期、この日に合わせて、栽培農家に依頼されたお花とお見受けしました。(スゴイ!)

床の掛物は、残月の間が了々斎筆「十目視十手指」、御幸の間には如心斎筆「面筥画賛」、ともに而妙斎箱の品でした。
※十目視十手指(じゅうもくのみるところ じゅっしゅのさすところ)=十人が十人みなそう認めるところ。多くの人の判断や意見が一致すること。
※面筥(めんばこ)=能面を収めておく箱。

40名を超える客に一服点の濃茶をさし上げるのは、数茶碗の用意からして大変なことと推察しました。

ともあれ、久しぶりの大寄せ茶会、四年ぶり開催の「秋の大茶会」を堪能させていただきました。 !(^^)!

庭の西王母がやっと花開きました。
例年、9月に一輪早咲きするのですが、今年は暑さのせいでしょうか、早咲きはありませんでした。
晩秋のこの時季に咲くのは通常通りといったところです。 (^^)