六義園

桜が終わり、躑躅の季節を迎えています。

※公園の躑躅

YouTube上には、躑躅の名所として東京・駒込の特別名勝「六義園」が紹介されていました。
池を中心に園内を一周する動画はうまく作られていて、居ながらにして見学したような気分になってしまいます。
いやはや、便利な時代になりました…。 (^^)

「六義園」は、五代将軍綱吉から側用人・柳沢吉保が賜った下屋敷の庭に、元禄十五年(1702)に完成した池泉回遊式庭園で、園名は「六義」による庭園配置からその名があるとか…。
「六義園」は明治初期に三菱財閥をなす岩崎家の所有となり、昭和13年(1938)に東京市(現:東京都)に寄付されています。

さて、気になるのが「六義」という言葉です。早速『広辞苑』を引いてみました。

りくぎ【六義】

①詩経大序にいう詩の6種の分類。すなわち賦(ふ)・比(ひ)・興(きょう)・風(ふう)・雅(が)・頌(しょう)。賦は感想そのままを述べたもの、比はたとえを採って感想を述べたもの、興は外物に触れて感想を述べたもの、風は民間に行われる歌謡、雅は朝廷でうたわれる雅正の詞藻(しそう)、頌は宗廟頌徳の詞藻。

②紀貫之が①を転用して古今集仮名序において述べた、和歌の6種の風体。そえ歌・かぞえ歌・なずらえ歌・たとえ歌・ただこと歌・いわい歌。転じて、和歌。「六義の道」///

元は詩について、次いで日本で歌について転用された六種の分類のようです。
和歌の6種の風体について辞書を引くと、以下のような感じでしょうか…。

そえ歌【諷歌】…思いを表面に現さず他の事にことよせて詠んだ歌。詩の六義の「風」に当たる。
かぞえ歌【数え歌】…他のものにたとえないで、そのままを詠んだ歌。詩の六義の「賦」に当る。
なずらえ歌【準え歌】…他の物事になぞらえて詠んだ歌。詩の六義の「比」に当たる。
たとえ歌【譬え歌・喩え歌】…自然の風物を借りて心情を託した歌。詩の六義の「興」に当たる。
ただこと歌【徒言歌】…譬喩(ひゆ)を借りずに、深い心を平淡に詠じた歌。詩の六義の「雅」に当たる。
いわい歌【祝歌・頌歌】…祝いことほぐ歌。詩の六義の「頌」に当たる。

これらの内、私的にイメージし易いのは「たとえ歌」「いわい歌」あたりでしょうか…。 (^^)

香道には「六義」を題材にした組香が二、三あるようですが、外盤物に名称そのままの「六儀香」があります。

外盤物④「六儀香」

◆香四種
一として 四包で内一包試
二として 同断
三として 同断
客として 三包で無試

◆聞き方
出香十二包を次の六組に結び合わせておきます。
一一、三三、客客、一二、客二、二三
試み終わりて、六組を打ち交ぜ、一結びずつ前後を変えずに炷き出します。
札裏は、長歌、短歌、旋頭歌、折句、誹諧、混本歌の六つ。(札表は常の通り)
札の打ち様は次のようです。
一一は短歌、三三は長歌、客客は混本歌、一二は折句、客二は旋頭歌、二三は誹諧(はいかい)

◆記録(住吉方、玉津嶋方に分かれ、当りだけを記す。全当たりは十二支の、他は点数)
|   一 ウ 一 二 ウ 三
|   二 ウ 一 三 二 三
札名  折 混 短 誹 旋 長 

◆盤
盤一面、鳥居二基、瑞籬四、松五本、榊五本、(住吉上座 松 / 玉津嶋下座 榊)

平成8年に名古屋・徳川美術館で「香(かおり)の文化」展が開催されました。
同展図録には東京国立博物館蔵「十組盤」の写真が載っています。下は「六義香」の盤一式です。
解説には、「六義とは和歌の種類であるそへ歌・かぞへ歌・なずらへ歌・たとへ歌・たゞこと歌・いはひ歌をいう。和歌の神である玉津島と住吉神社の額をかけた鳥居を立てて左右に分かれ、玉津島側は榊、住吉側は杉の造花を盤上に立てて競う」とあります。

※玉津島神社(和歌山市)と住吉大社(大阪市)は和歌の神とされています。
※札裏の六種が、古今集仮名序にある和歌の六種の風体ではなく、以下の六種になっているところは、軽妙洒脱、遊び心たっぷりの変化球で、とても面白いと思っています。

<札裏>
長歌…和歌の一体。五七調を反復して連ね、終末を多く七・七とするもの。
短歌…和歌の一体。長歌に対して、五・七・五・七・七の五句体の歌。
旋頭歌…和歌の一体。五七七・五七七の六句体。
折句…短歌・俳句などの各句の上に物名などを一字ずつ置いたもの。
(例)ら衣つつなれにしましあればるばるきぬるびをしぞ思ふ (かきつばた)
誹諧・俳諧…滑稽味を帯びた和歌の一体。
混本歌…和歌の一体。何を指すのか未だ定説をみない。

※ナンジャモンジャ