9月9日は…

今日9月9日は語呂合わせで「救急の日」となりますが、私的には敢えて「重陽の節供」と云いたいところです…。
元は旧暦九月九日の行事ですが、明治時代に新暦に移行してから、カレンダー上で9月9日ということに…。 (^^)

昨日8日(日)、朝7時台のNHKR1「マイあさ!」の「暮らし催事記」は、和文化研究家の三浦康子氏が出演して、渡辺ひとみキャスターとの間で「重陽の節句」についてアレコレ語っていました。
お話がとても上手くまとめられていたので、昨日の7分間のお話をざっと文字にしてみました。

※以下は、PC上で音声をテキストに変換し、編集したものです。(変換精度はとても高いです!)
※w:渡辺ひとみキャスター/ m:三浦康子氏

w:今回のテーマは重陽(ちょうよう)の節句です
m:はい、重陽の節句は9月9日に菊を使って不老長寿を願う行事で、別名「菊の節句」といいます。古来、何事も陰と陽に分けられるという考え方がありまして、数字の場合は偶数が陰数、奇数が陽数とされています。この陽数が連なる日をお祝いしたのが、3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句などの五節句ですが、9月9日は最も大きな陽数が重なるので重陽といいます。

w:植物の菊を使って不老長寿を願うのは何故なんですか。
m:これはですね、重陽の節句は平安時代に中国から伝わってきたんですが、古くから菊が薬草としても親しまれ、不老長寿につながると考えられてきたからなんですね。で、有名なのが菊水伝説でして、菊が群生している川の水を飲んで暮らしていた集落では100歳を超える長寿の人がたくさん住んでいたという伝説があります。また、菊の露を飲み続けた少年が若い外見のまま何百年も生きたという菊慈童伝説があり、「菊慈童」は能の演目としても人気があるんです。

w:まもなく季節を迎える花でもありますが、重陽の節句では菊を使ってどんなことをするんでしょうか。
m:色々あるんですけれども、代表的なのが「菊酒」と「被綿(きせわた)」です。菊酒は菊の花びらを浮かべたお酒を飲むことで、先ほど紹介した菊水伝説や菊慈童につながって、長寿を願う習わしです。お酒が飲めない方やお子さんはぜひお水でやってみてくださいね。で、被綿というのは菊の花に真綿をかぶせて、翌日菊の露や香りの移ったその綿で体を拭いて、老いの成分や厄をはらって不老長寿を願うという習わしです。今で言うアンチエイジングになりますよね。で、最近は菊の種類が豊富でピンポン玉のようなピンポンマムやスプレー状に咲くスプレーマムなどの西洋菊も人気ですから、菊のフラワーアレンジに綿をかぶせて被綿を楽しんでみてはいかがでしょうか。丁度明日が重陽の節句ですから、今日は菊に綿をかぶせるのにちょうどいいタイミングといえます。

w:「きせわた」という和菓子・生菓子はありますよね。
m:あります。こういった季節の行事の名前というのはお菓子の菓銘と言うんですけれども、お名前になってること非常に多くて、さすが食いしん坊…。

w:(笑)この風習を表現しているんですね、はい、その他どんな習わしがありますか。
m:菊の花を浮かべた菊湯に入ったり、あとは菊を枕に入れた菊枕で眠ったり、菊合(きくあわせ)と言って育てた菊の美しさを競ったりするのが伝統的な習わしです。現代でしたらハーブバスやアロマテラピー感覚でお風呂に菊の花びらを浮かべてみたり、枕元に菊の花を置いたりしてもいいんじゃないでしょうか。それから、重陽の節句には菊以外にもあるものを飾る習わしがあります。ちょっと意外なものなんですがひとみさん、なんだと思います?

w:雛人形です。去年リスナーの方からのお便りで知りました。
m:正解です。何故かというと桃の節句で飾ったそのひな人形を、半年後の重陽の節句で虫干しを兼ねて飾って健康・長寿・厄除けなどを願う風習で、江戸時代にすでに庶民の間に広がっていったんですね。で、雛人形というのは女性の幸せの象徴であり、その人の分身として災いを引き受けるという役目もあるので、感謝を込めて再び飾って長持ちさせるということが、長生きにも通じると考えられています。これを「後(のち)の雛」と言いまして秋の季語にもなっているんですね。また、桃の節句では雛人形に桃の花を飾りますが、後の雛では菊の花を飾るので、華やかな中にも落ち着いた大人の雰囲気が漂います。どちらかというと桃の節句が子ども向きであるのに対し、重陽の節句は大人向きと言えるので、後の雛は大人のひな祭りと捉えることもできます。ひな人形を愛でながら菊酒を飲んで、移りゆく季節に人生を重ねるというひと時、まさに大人のひな祭りと言えますよね。

w:お子さんが大きくなったり、そもそも子供を持たない方も自分自身の幸せを願って行う「後の雛」いかがでしょうか。重陽の節句にはいろんな楽しみ方があるのですね。
m:そうなんですよね。時代とともに重陽の節句はだんだん衰退してはいるんですけれども、昔は五節句を締めくくる行事として非常に盛んだったそうなんですね。で、日本の行事には一年を通じたストーリーがあって、五節句の場合、1月7日の人日(じんじつ)の節句、いわゆる七草粥で新年の健康を、3月3日の桃で女の子・5月5日の端午で男の子の健やかな成長を祈願してから、7月7日の七夕で物事の上達を祈って、9月9日の重陽で最も大事な命にスポットを当てています。五節句を連続シリーズにたとえれば、重陽の節句が最終回になるので重みがあるんですよね。特に家庭の行事は家族の幸せを願う気持ちを表現していますから、行事育の観点でも重陽の節句をお気軽に楽しんでいただけたらいいなと思います。

w:陽が重なる明日は吉日です。明日が良い日でありますように。三浦さんありがとうございました。
m:はい、ありがとうございました。

…ということで、今夜は菊酒で乾杯です。 (^^)

※8日(日)の番組「マイあさ!」は、「らじるらじる」聞き逃し配信で聞く事が出来ます。 (^^)