中秋の名月は…

今日は旧暦八月十五日、「十五夜」「中秋の名月」の日です。
今宵は、月見団子、果物などを供え、ススキに萩を添えて、ちょっとした月見の宴です。
当地では、月見団子は丸い形ではなく、芋の形となっています。(三色団子)
お天気を心配していましたが、幸いなことに、お月様はしっかり顔を出しました。 (^^)

お月見の花は、ススキと萩。
どちらも秋の七種(草)に数えられている花です。

『萬葉集』巻第八には山上憶良が詠んだ秋の野の花が二首あります。

| 山上臣憶良の、秋の野の花を詠む二首
1537 秋の野に咲きたる花を指(および)折り かき數ふれば七種(ななくさ)の花
1538 萩の花尾花(をばな)葛花(くずばな)瞿麥(なでしこ)の花 女郎花(をみなへし)また藤袴(ふぢばかま)朝貌(あさがほ)の花

上記は、日本古典文学大系『萬葉集』(岩波書店)からの引用で、原文は以下の通りです。
※但し、辞書に無い漢字は俗字等に置き換え(尓・萩・貌)…萩(はぎ)は国字

| 山上臣憶良詠秋野花二首
秋野尓 咲有花乎 指折 可伎數者 七種花
萩之花 乎花葛花 瞿麥之花 姫部志 又藤袴 朝貌之花

なお、「朝貌」については、牽牛花(今のアサガオ)、旋花(ヒルガオ)、木槿(ムクゲ)、桔梗(キキョウ)など諸説ありますが、現在では「桔梗」とするのが定説とか…。
因みに、ススキとハギは共に『萬葉集』に詠まれた植物ランキングベスト10に入っていて、中でもハギはNo.1です。

秋の七種(七草)は香道で用いる「札名」にも二、三入っています。<9/18訂正>

この時季に好んで行われる定番の組香と云えば、矢張り「月見香」あたりでしょうか。
以前のブログ記事から引用します。

【月見香】
◆香は二種
月として 四包で内一包試
客として 三包で無試

◆聞き方
月の試みを聞いた後、月三包・客三包の計六包を打ち交ぜ、内より三包を炷き出します。
香の出方により、次の名目で答えます。

月月月…十五夜、月月ウ…待宵
ウ月月…十六夜、月ウ月…水上月
ウ月ウ…木間月、月ウウ…夕月夜
ウウ月…残月 、ウウウ…雨夜

名目は、客(ウ)を水、木、明るさなどにたとえ、月と結びつけることによって様々な月見の情景を表しています。

今宵は、全国各地で様々なお月見の催しが行われていると思います。 (^^)

ふいっと、かつらお【桂男】のことを思い出しました。
以前、冷泉家見学会の折に、床に掛けられていたのが桂男を描いたもの。
桂男は、月の世界に住んでいるという伝説上の男。

『日本国語大辞典』の補注には、「古くからの言い伝えとして、月の中に高さ五〇〇丈の桂があり、その下で仙道を学んだという呉剛という男が、罪をおかした罰としていつも斧をふるってきりつけているが、きるそばからその切り口がふさがる」という伝説から、とあります。

午後六時半ごろ、東の空に大きな月をしっかり見ることができました。 (^^)
秋のお月見は、大切な「行事育」の一つですネ。


※公園のゲンノショウコ【験証拠】(服用後ただちに薬効が現れる意)