鳰の海
いよいよGWが始まりました。
天気予報によれば、ほぼほぼ好天が続くようです…。
昨日は新幹線経由で、琵琶湖西岸の比叡山麓にある滋賀院門跡・天台宗務庁で行なわれた「お香とお茶の会」(主催:松栄堂)に出かけました。
コロナ禍による4年間の休止を経て、昨年から再開された催しです。
志野流香席の組香は「禁裏香」。
香は三種で
桜として 三包有試
柳として 同断
客として 二包無試
試みの後、桜、柳、客の各二包計六包を打ち交ぜて、炷き出された香りを聞いて答えるというものです。
宗務庁二階の講堂に設けられた立礼席からは、霞たなびく空(黄砂の影響?)と眼下に広がる雄大な琵琶湖を一望することができ、初めて見る壮大な湖景に目を見張りました。
昨日は天候に恵まれ、陽射しはたっぷり、初夏の爽やかな気持ちよい風が流れていました。
※2F講堂から網戸越しにパチリ
記録紙を拝見すると、香三種に名づけられた銘は「行春」「霞の空」「鳰の海」。
思わず「鳰の海だぁ~」と呟いてしまいました。※鳰(にお)の海は琵琶湖の別称。(鳰=カイツブリの古名)
これほどまでに香筵の情景と合致する香銘に感慨を深くしたことがありません。
素晴らしいの一言です。 (^^)
香銘がらみで思い出せば、表千家の茶席で用いられた茶杓の銘が「古木」。
六十一種名香(十一種+五十種)に因み、惺斎の時代に作られた五十本の茶杓の内の一つとのこと。
煤竹のように見えましたが、これまた会に合わせた茶杓の銘と感じ入りました。
『香銘大鑑』には、六十一種名香の「古木」について次のような説明があります。
枯木・古木(こぼく)… 枯れた木(枯木)。年を経た木、老木(古木)。この香、最初古木という心にて古木と名付けられたが、朽ちたるところ多くして枯木に似たる故、枯木の文字に改められた。道誉銘。[木所:羅国、味:苦甘辛]
そういえば、表千家の席で出された正客以下の三碗はフランス、ペルシャ、メキシコで焼かれたお茶碗とか…。
スウェーデン製の白い末広型の水指など、亭主の溢れる遊び心が随所に感じられ、実に楽しいお席でした。 (^^)
点心は京都・三友居さんの品で彩り豊か、美味美味でした。
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外組24番【海月香】
香四種
團々離海嶠
漸々出雲衢
今宵一輪満
清光無何處右四句を一句づつ香の一種に当て十種香のごとく組むべし。聞きようは試香三種終りて先ず團々の香二包に漸々二包、今宵の香一包入れ、五包打ち交ぜ炷き出す。聞き終りて名乗紙に認め出す。先記録に記す。次に、残り團々一包、漸々一包、今宵二包、清光一包合わせて五包打ち交ぜ炷き出す。一炷開きなり。札筒を用いるべし。又は一枚札にても香炉を一つにして炷くべし。清光の出るを終りとして後は不聞。清光の香炉香盆に乗せて空炷とすべし。飾る所習い有り。五事の内なり。名目あり。左のごとし。
全の人は 二千里外と中段に書
清光ばかりの当りは 新月宮 と書
今宵ばかりの当りは 三五夜中と書
無聞は 雨雲 と書
一炷の当りは 木間月 と書
初五炷の内当り多は 暁雲 と書
後五炷の内当り多は 宵雲 と書
両方等分は 山家月 と書尚、記録の面にて考ふべし。又、記の奥に歌一首書く。左のごとし。
水の面にてる月なみをかそふれは こよひそ秋の最中なりける
(記録例 略)
きろく是に順ずべし。