目線の先は…
「他の方が香りを聞いているとき、どこを見ていたらいいのですか?」
YouTubeの動画「香道と和歌」の中で、参会者のお一人の方が蜂谷宗苾若宗匠に尋ねた質問の一つです。
「わかまつり2022」事業の一環として、「香道と和歌」のプログラムは、品川区天王洲の運河沿いの建物「舟」を用いて、今年3月に講義と香席をワンセットにして催されたようです。
動画を見ると、多くの方が一般参加者のようでしたが、香席では若宗匠が進行差配、説明、質問への回答、そして記録紙の執筆も兼ねるというマルチな御活躍で、一席をまるごと掌握されていました。
冒頭の質問に対しては、キョロキョロしないでまっすぐ前を見たら…とした上で、座禅を引き合いに出して、畳一枚分の長さ一間(6尺)先を見ていたら良いとの回答でした。
「なるほど!」と、いたく納得しました。 (^^)
特に、お香席の動画は、めったに見ることができないリアルなもので、とても「興味深い」ものでした。
複数回視聴していますが、見るたびに新しい発見があるといった具合です。
同人の集いではなく、一般の方々をお客にした場合の香席の進め方を知ることができ、勉強になりました。
因みに、香席で行なわれた組香は、午前が【雲井香】、午後は【三体香】であったようです。
どちらも和歌を題材にした組香で、「わかまつり(和歌まつり)2022」の趣旨に沿った組香が選ばれていました。
これらの和歌は「詩歌をちこち」シリーズで紹介しています。
【雲井香】2019.12.22
【三躰香】2019.02.26
【雲井香】の香種は[舟・波・雲]、【三体香】の香種は[春夏・秋冬・恋旅]となっています。
「雲井」は、雲のある所、空の高いところ、天上の意があり、転じて皇居、宮中を指すところから、個人的には「わかまつり」のプロデューサーである近衛忠大氏の姿が思い浮かんできました。
ロケーション的にもピッタリの組香です。
「三体」は、建仁二年(1202)に後鳥羽院が催した歌会での所謂「三体和歌」に基づく和歌の三つの姿(体)のことで、春・夏は「ふかくおほきによむべし」、秋・冬は「からび(乾び)ほそくよむべし」、恋・旅は「ことに艶によむべし」ということのようです。
雅な趣きのただよう組香です。
※記録紙