盤物の雅び

暑い、暑いとわめいているうちに、月が替わり9月に入りました。
依然として暑さは続いていて、この夏の平均気温は例年より1.7度も高くなっているとか…。
暑いはずです!

昨日は雜節の二百十日。
立春から数えて二百十日目で、稲の開花と台風襲来の時期にあたることから、農家では厄日として警戒する日となっているようです。
尤も、台風と聞くと警戒するのは農家に限りませんが…。

5月に出版された『香道籬之菊 盤物の雅び』(風間書房)に「三舟香」の詳しい解説が載っていました。
三舟香については、2019年9月16日付けのブログでも紹介しました。

同本には、伝書『香道籬之菊』に収められている27の盤物について、写本の写しと翻刻、組香の方法、文化との関わりなど、書誌学に則って詳細に記されています。
真田宝物館所蔵の「三舟の香具」の写真も収められていました。

御家流で用いられている組香の構造式には、4T(香4包、内1包は試みの意/TはTrialの略)といった表記があり、初めて見たときに英文字のTはいつの時代から?と兼ねがね思っていましたが、[附録]の中にその由来が記してありました。
先々代の御家流宗家・三條西公正氏によって、実践女子大学における講義のために発案されたようです。

また、御家流は完全相伝制となっていますが、御家流のある流派では「T」の代わりに「試」が使用された流派もあるようです。
御家流独自の表記のようですが、御家流香人にとっては構造式を見れば組香の方法は一目瞭然のようです。

5月に日本橋三越で開催された18代永樂善五郎襲名記念展に合わせて行われた、永樂氏と「日々之好日」原作者・森下典子氏との対談が『茶道雑誌』8月号と9月号に載っていました。
襲名記念展には、二十四節気をテーマにした二十四点の茶碗も出展されていたとの記事を見て、東京へ行くべきであったと後悔の念を強くしましたが、終わってしまったことは致し方ありません。

永楽氏は東京藝大の日本画専攻に進学されていますが、三年間の浪人生活を経ての合格(三浪は平均とのこと!)だったそうです。
対談で印象に残っている部分を引用します。

森下:その時は、芸大受験の予備校に通われていたのですか?
永樂:そうです。どんな道でも同じだと思いますが、できる者同士はすぐにわかるんです。どっちが上手い下手か。その年に受かる数は決まっていますから、あいつが一番、あいつが二番と、普段からわかってくる。逆転なんてそうそう起きない。だからセンスだけじゃないんです。センスがあって、努力をしていて、常に負けん気で頑張り続けている人しかやっぱり残れないんですよね。

私は思わず、将棋界を席巻し、前人未到の八冠を目指している藤井聡太竜王名人を思い浮かべてしまいました。