「三種香」異聞
ヒオウギ【檜扇】の花が、梅雨の晴れ間を待ちかねていたように咲きました。
一番咲です。
数日前から、花茎が伸びて蕾も色んでいましたが、ここ二、三日は生憎の曇り空と雨模様でした、今日の太陽を待って開花したのかもしれません。
ヒオウギは邪気を払うとされ、京都・祇園祭を彩る花として知られています。
祇園祭の祭事は1日から始まっているようですが、毎年7月になるのを待っていたかのように花開くのですから実に不思議といえば不思議です。(昨年は2日でした!)
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香道の組香の一つに「三種香」があります。
三種類の香それぞれ三包の計九包を打ち交ぜ、内から三包取り出して炷き出し、聞いた香りの異同を答えるものです。
異同の組み合わせは、三炷の香りが[三つとも同、三つとも異、一番目・二番目が同で三番目が異、一番目・三番目が同でニ番目が異、一番目・三番目が同でニ番目が異]の五通りとなります。
答えは、右から一番目、二番目、三番目と縦の線を描き、同香と思えば縦線の上を横線でつなぎ、さらに名目を付けて記すことになっています。(くれぐれも左から書かないように!) (^^)
三種香の香図に付される名目は、どうやら一つではないようです。
下の一覧表は、『香道蘭(らん)之園』(元文二年(1737):菊岡沾涼)の復刻本、香書『香道賤家(しずがや)之梅』(寛延元年(1748):牧文竜)の影印本、そして志野流香道「外組」にある三種香の香図と名目です。
※衣配(きぬくばり)/品定(しなさだめ)/小紫(こむらさき)/雨夜(あまよ)/初冠(ういこうぶり)
『香道賤家之梅』にあるBの名目と、志野流香道「三種香」の名目は同じようですが、指し示す香図が異なっているのは何故なのでしょうか。
写本ではままあることなのかもしれませんが、興味深いところではあります。
上記のように、香三種各三包の計9包から三包を炷き出すのは「三種香」とよばれていますが、香四種各四包の計16包から四包を炷き出すのは「系図香」、香五種各五包の計25包から五包を炷き出すのは「源氏香」と呼ばれています。
香図の組み合わせは、三種香が5通り、系図香は15通り、源氏香は52通りとなっています。
古くは六種以上でも行われていたようですが、あまりに多く煩雑過ぎることからでしょうか、現在では「源氏香」までが主に行われているようです。
因みに、香六種・各六包の計36包から六包を炷きだす場合、異同の順列組み合わせは203通りになるとか…。
香図に付随する名目は、「源氏香」では『源氏物語』54帖から「桐壺」と「夢の浮橋」を除いた52帖のタイトルが引かれています。
また、「系図香」の名目については、志野流では『伊勢物語』から多く引かれているようです。
なお、志野流「三種香」の名目については、出どころがよくわかりません。
個人的には、名目に「琴の音」があることから『宇津保物語』ではないかと思ったりしています…。 (^^)
※かつて、2017年8月25日付のブログで「三種香」を、2020年5月1日付のブログで「系図香」を紹介しています。