歳暮香(再)
空気が冷たく感じられる一日でした。
山芍薬の芽が静かに春の訪れを待っています。
歳暮香の時季が巡ってきました。
これも「日日是好日」のタマモノです。
毎年行なう組香ではありますが、この一年を無事に過ごせたことに感謝して、心して一炷の香りに集中したいと思います。
香道の心得 ◆師走◆ (4)
平均して冬の組香がそうであるように歳暮香も試み共で十五炷とかなり長い。年・月・日・ウの組合せは十五通りとなり、その各々に歳暮にふさわしい名称が与えられている。
年に関するもので年ウ年は年内立春、年年ウは歳暮の魂祭、ウ年年は老後の歳暮、月に関するものは旅泊・山家・海辺の歳暮。日になると除夜・市中・騎中の歳暮。年月日を一体にしたものには関路・旅宿・雪中・川辺の歳暮に歳暮の述懐、懐旧などである。年内立春は旧暦でその年の内に立春のめぐり来ることで、連歌俳諧ではこれを冬としている。和歌では、年のうちに春は来にけり一年をこぞとやいはむ今年とやいはむ―と古今集の巻頭にあるから春の部である。たま祭は今では盂蘭盆会のみのようだが、中世までは年のくれにも行なっていたのだ。市中の歳暮は、年の市が立ち、顔見世に色めき渡る師走の京の町を想わせる。ほかのいづれも旅情豊かで絵になるような名目ばかり。歳暮香は一年の総集編、組香として傑作の分類に入る。心行くまで鑑賞したい。記録紙には是非興行した場所名と年号を記しておく。
【歳暮香】
◆香四種
年として 四包で内一包試
月として 同断
日として 同断
ウとして 三包で無試
◆聞き方
はじめに、次の四つの束に結んでおきます。
①年二包にウ一包の束
②月二包にウ一包の束
③日二包にウ一包の束
④年・月・日、各一包の束
年、月、日の試みを聞き終えた後、
上記①~④の四結び(束)を結んだまま打ち交ぜ、順次一結びづつ(更に三包打ち交ぜ)炷き出します。
◆答と記録
答は、年、月、日、ウで答えます。
銘々の聞きに応じて、名目が聞きの中段に書かれます。(一結びの三炷とも当った場合)
・[年ウ年]年内立春、[年年ウ]歳暮魂祭、[ウ年年]老後歳暮
・[月ウ月]旅泊歳暮、[月月ウ]山家歳暮、[ウ月月]海辺歳暮
・[日ウ日]除夜歳暮、[日日ウ]市中歳暮、[ウ日日]羇中歳暮
・[年月日]歳暮述懐、[年日月]歳暮懐旧、[月年日]関路歳暮、[月日年]川辺歳暮、[日年月]雪中歳暮、[日月年]旅宿歳暮
◆メモ
[年ウ年]と三炷とも当たった場合の名目は年内立春…と、パソコンのキーを打ちながらハタと気付いたことがあります。
この場合の「ウ」は立春を指しているのではないか…?
立春(2月4日頃)は、旧暦では年内と年明のどちらの場合もあって、年を跨いで行ったり来たりしていることから、[年ウ年]の名目にされたのではないでしょうか。
古今和歌集の巻頭歌は年内立春を洒落て詠んだ歌として知られています。
| ふるとしに春たちける日よめる 在原元方
年の内に春はきにけりひととせを こぞとやいはんことしとやいはん
それぞれの名目の出典については、時宜によるもの、詩歌によるものなどがありますが、『日本国語大辞典』には「○○歳暮」の○○について出典例がいろいろあげてありました。