元号・年月日
新年度が始まりました。
この時季を迎える度に、満開の桜の下で入学式を迎えた日を、何か新しいことが始まるような期待と希望に満ちた日々を懐かしく思い出します。
「青春」と聞いて「陰陽五行説では青を春に配しています…」と云うようではロマンもありませんが、「今がその時」と心して、これからも過ごしたいものだと思っています。
毎日が「日日是好日」のこころです!
お香の組香席や茶の湯の七事式では、参会者がどのように答えたのかを記録紙に認めることを常としているようです。
記録紙には、その会を催した年月日が終わりの方に記されることになりますが、その書き方となると流派による違いがいろいろ見てとれます。
①平成二十二年十一月九日
②己丑 三月二日
③丙申 十月末十日(丙申は十の右肩に小さく)
①は『裏千家茶道・七事式』(世界文化社)の「茶カブキ之式」記載の記録紙から。
②は『七事式・表千家流』(世界文化社)の「茶カブキ」記載の記録紙から。
③は志野流香道の記録紙から。
元号と年月日をそのまま漢数字で記す方法、年は干支で月日は漢数字で記す方法、年は干支で月日は漢数字で記すものの日は十日ごとに区切って「初・仲・末」を付して記す方法など、流派によっていろいろあるようです。
干支は馴染みがあるとはいえませんが、今の時代、音読み訓読みともに覚えておくと何かと便利です。
十干=甲乙丙丁戊 己庚辛壬癸
十二支=子丑寅卯辰巳 午未申酉戌亥
因みに、今年は己亥(キガイ・つちのとい)で、来年はそれぞれ次の組合せで庚子(コウシ・かのえね)となります。(^O^)
また、志野流香道では1日~10日を初一日~初十日、11日~20日を仲一日~仲十日、21日~30日を末一日~末十日と表し、31日を晦日、特に12月31日を大晦日と記しているようです。
それぞれに長い歴史と伝統がありますから、いろいろあって当然と思います。
なお、会が催された時や場所によって、例えば、神無月などの異称を十月の代わりに用いることもあるようです。
一人静の花が咲きだしました。
ところで、今日は5月から用いる新元号の発表がありました。
「令和(れいわ)」です。
思いもよらない元号ではありましたが、出典となる万葉集の詞書にある「令月」という言葉を聞いた瞬間、頭に浮かんできたのは「嘉辰令月歓無極」。
『和漢朗詠集』巻下 祝 774の漢詩です。
嘉辰令月歓無極 万歳千秋楽未央
かしんれいぐゑつくわんぶきょく ばんせいせんしゅうらくびやう
[現代語訳]このめでたいよい時節にあたり、私たちの喜びは果てしがありません。(万歳千秋を祝って、私たちの楽しみは尽きることがありません。)-川口久雄『和漢朗詠集 全訳注』より-
この漢詩は、組香「慶賀香」で記録紙に書かれる詩となっています。
参考までに、発表があった『万葉集』巻第五「梅花の歌三十二首」の詞書をあげておきます。
※出典『日本古典文学大系 萬葉集二』(岩波書店)