119年ぶりの記録更新中…

暦の上で、今日は旧正月一月一日。(当然、新月です!)
とはいっても、日本では休日にはなっていませんし、旧正月という言葉は残っているものの、これまで特にお祝いをした覚えがありません。
でもでも、古いしきたりに則って、ちゃんとお祝いをしている所は今でもあるのではないでしょうか…。

※柳と南天

今朝のニュースで、金沢では毎年この時季に氷室(ひむろ)作りを始めるそうですが、今年は暖冬の影響で雪が全くなく、とりあえず神事のみ行なうとの報道がありました。
東海地方の平野部では、この冬まだ雪を見ていません。
名古屋での最も遅い初雪の観測日は1901年(明治34年)1月21日だそうです。
22日以降、雪は降っていませんので、119年振りに記録を更新したばかりか、天気予報によればまだまだ記録を延ばしそうです。
そうこうしている間に、節分・立春ということになりそうな気配です…。

昨年末に発行された新刊書『香木三昧』(淡交社)がとても面白いです。
著者は麻布・香雅堂主人の山田眞裕氏。

※下半分はカット!

本の帯のキャッチコピーに注目です。

「伽羅を生む樹」があった-。麻布香雅堂主人があなたに伝える最新版の香木の話。

伽羅を生む樹木、即ち伽羅樹が存在し、しかも人工栽培されており、聞香にも堪えうる伽羅が存在するとして、栽培の様子がカラー写真で載せてありました。(尤も、許可が得られていないとして、場所は明らかにされていませんが…)

従来、ジンチョウゲ科のアキラリア属の樹木が沈香になることは知られていましたが、「ある種は羅国となり、ある種は真那賀となり、真南蛮となり…、そしてある種は伽羅となる」ことは初耳で、ちょっとした驚きでした。

既に、ベトナムや海南島あたりでは植林が行なわれていて、「植林沈香」として世に出回っているようですが、茶葉と同様に香木が再生できるとなると、炷かれて枯渇する心配はなくなるので、人工栽培は時代の要請であり、必然と云えなくもありません。

本の内容は、「香木」にフォーカスして慎重に記されています。

香木に纏わる色々なお話が書かれていますが、正倉院所蔵の黄熟香に対する所見は説得力がありました。
この黄熟香に対して、何時の頃、誰が名づけたかは解りませんが、蘭奢待との別名が付されたのが、誤解や混乱?の元となっているかもしれません。

何といっても、蘭奢待と云えば、天下無双の名香と謳われています。
本を一読した限りでは、黄熟香は黄熟香で一系統ですが、蘭奢待には二系統あるように読みとれました。

一つは正倉院所蔵の黄熟香が截香・下賜されて蘭奢待と呼ばれている香木、もう一つは見るからに樹脂が十分で潤いのある蘭奢待と呼ばれている香木の二系統です。
確かに、正倉院所蔵の黄熟香(別称:蘭奢待)と、例えば徳川美術館所蔵の蘭奢待とは見た目からして異なっていたように思います。

また、沈香の木所としての「六国(りっこく)」については、詳しく述べてありますが、微妙な側面もあるように受け取りました。

その他、ニセモノ香木の話や海外の香文化の話、「香道」の御家元・御宗家とのこぼれ話などなど、香木の向こう側に拡がる世界が随所で垣間見られ、個人的には興味が尽きない内容でした。

勿論、最初に押えるべきところはちゃんと押えてあります。(^O^)
以下に、「はじめに」の部分から引用します。

「過去の香道に関する知識を得ることと、実際に香道の道を辿ることとは全く別問題であり、言い換えると「香道の文献を読んでも、香道が身に付くわけではない」と申しあげたいのです。香道について語ること、そして香の道を導くことは、御家元・御宗家にしか叶わないことなのです。」

確かに、その通りだと思うのです…。

香道のみならず、全ての伝統芸能・伝統文化について云えることかもしれません…。

※振振(ぶりぶり)香合