二大流派

二月末の新聞記事に「香りを聞き分け 心軽やか」との見出しで、香道がとりあげられていました。

「香道をご存じですか? 白檀などの香木を温め、香りの違いを楽しむ日本の伝統的な遊びです。…」というイントロのもと、東京麻布・香雅堂で催された組香の体験記が記されていました。

当日の組香は「梅烟香(ばいえんこう)」。

◆香は三種
梅として 二包で内一包試
烟として 同断
香として 一包で無試

◆聞き方
試み(梅・烟)を聞いた後、梅・烟・香の各一包計三包を炷き出します。

体験記にあるように、春がすみのたなびく野辺に、梅の花の香りが漂う風情を思い浮かべながら、それぞれの香りを聞き分ける趣向と云えましょう。

春の魁・梅の花の清らかな香り、立ちのぼる空気の揺らぎとしての烟の香り、そして客香の香りをそれぞれ聞き分ける組香となります、とは云っても、香木「梅」の香り=梅の花の香りという訳ではなく、あくまでも心象風景であるところが組香の楽しさと云えるのかもしれません。

それぞれの読みは、梅(うめ・むめ)、烟(けむり・けぶり)、香(かおり・かをり・かほり)あたりでしょうか…。(^O^)

香名について一言。

梅の花は、名花十友の一つで「清友」となっていますから、どこまでも清らかな香りです。
烟は煙と同字で、古くは「けぶり」。源氏物語・賢木に「名香のけぶりもほのかなり」とあります。
香を(かほり)と読むのは、小椋佳作詞作曲の「シクラメンのかほり」でお馴染です。源氏物語・花散里には「近き花橘のかほりなつかしくにほひて」とあります。

記事には絵が添えてありました。

写真の乱箱には志野流の香道具が納めてありますから、下の画もてっきり志野流の香席と思いきや、よくよく見ると御家流の道具配置となっています。
なんと! 香道の流派である志野流と御家流にちゃんと配慮がなされていました。(^O^)

新聞記事に戻ります。

一通り組香「梅烟香」について記した後、香道には二大流派として志野流と御家流があると記してありました。

志野流は武士系、御家流は公家系と聞いたような覚えがありますが、どちらも香炉を用いて香木の香りを聞くことに変わりはありません。
用いる香道具や規矩作法が少し?大いに?異なるだけなのではないかと個人的には思っています。
とはいえ、流派の流派たる由縁は、その違いにあるわけですから、そこは絶対に譲ることが出来ないのが流派の宿命と云えます。
なお、志野流は家元制度(一子相伝)、御家流は完全相伝と云われているようです。

ところで、香道の流派は幾つあるのでしょう?
十以上であろうことは推測されますが、確かな数となるとよく解りません。
茶道や華道の流派は数十とも、百を越えているとも云われていますから、香道の流派は随分少ないと云えるのかもしれません。

茶道・華道・香道に流派が存在している理由は、「皆伝」を受けた高弟が独自流派を結果として創ることになったからに外ありません。
長い歴史をつらつら思い出してみると、致し方の無いことと云えなくもありません…。

うぐいすかぐら【鶯神楽】の花が次々と咲いています。

あせび・あしび【馬酔木】の花も満開です。

春です。(^O^)