立夏・端午の節句・あやめ草
GW最終日は朝方から生憎の雨模様。
そんな中でも咲いたのが一輪の梅花空木の花。
近づくと柔らかな芳香に包まれます。
昨日は二十四節気の一つ「立夏」でした。
文字通り、夏が立つ、暦の上では夏ということになります。
尤も、名古屋では2日に最高気温30.8℃の真夏日を観測していて、体感的には既に夏といったところです。
目には青葉 山ほととぎす はつ鰹 (素堂)
これ以上は無いような、初夏の風物詩三点セットです。
初鰹と云えば、名古屋の老舗菓子舖・美濃忠の棹物「初かつを」は、この時季お薦めの一品。
淡い桃色と糸で切った切り口の縞模様がとても美しい、上品な甘味の羊羹です。!(^^)!
昨日5月5日は端午の節供でした。
「端」は初めの意、「午」は「五」と同音、さらに奇数・陽数「五」を重ねた重陽思想から、元は旧暦五月五日の節供でしたが、明治五年の改暦に伴って、日付はそのまま新暦(現行グレゴリオ暦)5月5日にスライドされて現在に至っています。
とはいうものの、今でも旧暦五月五日に節供のお祝いをされている旧家もあるようです…。
端午の節供では、邪気を払うために菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)を軒にさし、粽や柏餅を食べるのが習いとか…。
昨日は、粽(ちまき)と柏餅を食し、菖蒲湯にも浸りましたので、豪華?三点セットで邪気のみならずVirusまで払うことが出来たのではないかと秘かに思っています。(オマジナイ、オナジナイ!)
ところで【菖蒲】の読みには(しょうぶ)と(あやめ)の二通りがあります。
邪気を払うといわれる菖蒲(しょうぶ)はサトイモ科で全体に香気を持ち、ガマの穂に似た目立たない花をつける植物。
一方の菖蒲(あやめ)はアヤメ科に属し、陸地草原で黄と紫の虎斑が鮮やかな美しい花を咲かせる植物です。
(しょうぶ)と(あやめ)は別物なのですが、昔々は菖蒲(しょうぶ)のことを(あやめ)と云っていたそうですから、ややこしい話で思い違いをし易いのも無理はありません。
※(左)ショウブの花/(右)アヤメの花
※菖蒲(しょうぶ)と菖蒲(あやめ)については、2018.3.22付けのblogに「ショウブ(菖蒲)とアヤメ(菖蒲)」のタイトルで記事にしています。→ https://watayax.com/2018/03/22/ayame-shoubu/
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香道の組香にも【菖蒲香】として、二つの【菖蒲】を題材にした組香があるようです。
志野流香道の組香目録にある【菖蒲(あやめ)香】は、源頼政の歌を証歌とした組香です。
五月雨に池のまこもの水まして いづれあやめと引きぞわづらふ
歌の各句を香五種にした組香で、5月によく行われているようです。
また『香道賤家梅』の中にも【菖蒲香】が載っています。
香は四種で、「菖蒲(さうぶ)」の香二包、「蓬(よもぎ)」の香二包、「盧橘(ろきつ・はなたちばな)」の香二包、「時鳥(ほととぎす)」の香一包となっています。(「さうぶ」は「しょうぶ」の古語)
聞き方は、「菖蒲」「蓬」「盧橘」の計六包を打ち交ぜ、その内から三包をとりだし(他の三包は捨て香)、客香の「時鳥」一包を加えた計四包を二包ずつ二組にして、順次炷き出すというものです。
香の出に応じて名目が用意されていて(菖蒲・蓬・花橘・櫛錺・軒の露・暁の声・夘の花重・雨の曙・袖に餘る香)となっています。
例えば、菖蒲・菖蒲と聞けば(菖蒲)、蓬・時鳥と聞けば(雨の曙)といった具合です。
実は、この組香にも証歌があり、『夫木和歌集』に収められている後徳大寺左大臣の歌です。
あやめ草ここのふしをやととのへて 玉のよとのにけふはふくらん
あやめ草?…、急にこの組香【菖蒲香】の読みが妖しくなってきました…。(^O^)
※二人静の花が咲いています。