蘭奢待の付箋
松原睦『香の文化史』(雄山閣)に興味深い写真が載っていました。
明治五年(1872)八月に正倉院が開封され、内部の宝物が検査された際に撮影されたという黄熟香(蘭奢待)の写真です。
香木が納められていたと思われる櫃の上に白布を敷き、その上に蘭奢待は置かれていますが、現在の蘭奢待に付けられている白紙付箋は見当たりません。
加えて、明治天皇の命により明治十年に截香されたという左端近くの切り口が写っていません。
※「正倉院の世界展」絵ハガキ
現在、蘭奢待には3枚の付箋が付けられていて「足利義政拝賜之処」「織田信長拝賜之処」「明治十年依勅切之」となっています。
二枚の写真から、3枚の付箋は明治10年以降に付けられたものであることが分かります。
よく知られているように、蘭奢待には切り取った跡がたくさんありますが、三枚しか貼られていないということは、はっきりしている?大きな切り口が三名によるものということなのでしょうか…。
因みに、志野流香道家元には明治10年に截香されて下賜された蘭奢待の一片が所蔵されています。
黄熟香(蘭奢待)は時々「正倉院展」に出展されています。
昭和21年(1946)から始まった「正倉院展」には、毎回なにがしかの香具が出展されているようですが、香木が出展されたのは同本によると以下のようです。
昭和22年 黄熟香(蘭奢待)
昭和37年 全浅香
昭和57年 黄熟香(蘭奢待)
昭和62年 全浅香
平成09年 黄熟香(蘭奢待)・全浅香
平成20年 全浅香(紅塵)
平成23年 黄熟香(蘭奢待)
加えて、昨年の東京国立博物館で開催された「正倉院の世界」展には黄熟香(蘭奢待)が8年ぶりに出展されました。
令和01年 黄熟香(蘭奢待)・沈水香・白檀香
昨年の展覧会では、上記三点の香木と共に元禄時代に作られた黄熟香収納箱が展示されていました。
目を見張るような存在感で、個人的には強く印象に残っています。
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暦を見ると、今日は旧暦の五月五日、端午の節供の日です。(6月も末だというのに…)
古式の暦に従ってお祝いをしている所では、節供飾りが行われているかもしれません…。(^^)
今年は半夏生(はんげしょう)が綺麗に育ちました。
昨日は有馬籠に入れられ、床を飾りました。