和楽会・4月

四月も末となり、炉の名残の時季です。

表千家流では透き木釜は三月、吊り釜は四月となっていますが、裏千家流ではその逆で三月が吊り釜、四月は透き木釜となっているようです。

今日の和楽会の設えは表流に従って、吊り釜に旅箪笥の取り合わせとなりました。

お花は、立鼓の花入れに黄エビネが収まりました。

香道一口メモ・153【十返りの法】

香木はふつう一度たき終わると大部分、香りはうせてしまうが、蘭奢待は名香ということで、香道が繁栄していた天明時代に当時の香人たちが十度は聞きに耐え得るとの聞香方式をあみ出したのがこれ。だが、世間への流出は微々たる量だから経験するにはかなり難儀。蘭奢待は五味を兼備している有数な香。一方の一味(いちみ)立ちの香もまた少ない。

※天明時代=1781~1789年

※五味=甘・酸・辛・苦・鹹

※十返り(とがえり)の法=詳しい方法は知りませんが、蘭奢待は表裏を十回返して炷いてもなお香りが立つほどの名香ということなのでしょうか。
ロマンに満ち満ちていて、まさに「秘してこそ華」といえるような気がします…。

因みに、北大路功光著『香道への招待』(淡交社)では、十返の法について以下のような記述があります。

■■(前略) また、古来、蘭奢待を聞くのに特別の作法が制定され、十返の法などと称して、同じ香木が十回も聞ける、それほど強力な香だといわれている。
おそらく、この香は最上の品であるのは事実だろうけれども、あまり勿体をつけられると、つい、正体を知りたくなるのである。
いったい、同じ香を十回も聞くというのは何を意味するのか。それは無意味に近いだろう。なぜなら、香席の連衆の人数、香木の大きさ、一人一人の聞く時間の集積、そして、一度だけの香席なのか、数度にわたって席を改めるのか、伝書には何も書いてない。(後略)■■