上林・半袋10匁

「お茶銘は…」
「吉の森でございます」
「お詰めは…」
「かんばやしでございます」

先日のNHKEテレ「趣味どきっ!茶の湯表千家 第五回」には、宇治・上林春松(かんばやししゅんしょう)本店の上林秀敏氏が出演し、茶師の仕事や心構えについていろいろお話をされていました。

茶師の大切な仕事の一つが、茶壺に茶を詰めること。
茶壺には直に薄茶用の茶葉を詰め、その中に碾茶(濃茶用)を入れた和紙袋・半袋(はんたい)を納める様子が映し出されていました。
茶壺は厳重に封をされ、半袋に入っているお茶銘などを記した「御茶入日記」を添えて茶家に届けられるようです。
※碾茶(てんちゃ)=摘んだ茶葉を蒸して乾燥させ、さらに葉脈などを除いたもの。

※「半袋」-番組テキストより

これまで写真で何度か見てきた碾茶の袋(半袋)について、初めて知ったことがあります。
なんと、半袋に詰めてある濃茶用の碾茶は10匁(もんめ)だそうです。
10匁=37.5g(約40g)です。
ハタと気付きました。
これは、街中の茶舗で売られている抹茶の単位40gと同じではないか…。
碾茶を石臼で碾いたものが所謂「抹茶」ですが、10匁の茶葉は体積は減少するものの重さは矢張り10匁です。(石臼が若干食べるかも…)

市販されている抹茶は40gを一つの単位として価格が表示されています。
茶の湯では、茶杓で掬う一人分当りの抹茶は、濃茶で三杓およそ1匁(3.75g)とよく云われているところです。
単純計算をすると、抹茶約10匁(40g)で濃茶なら約10人分、薄茶で約20人分といったところでしょうか。

昔は、現在のように「抹茶」の形で売られてはいないので、茶家は届いた茶壺から碾茶を取り出し、石臼で碾いて「抹茶」にしていたようです。
今でも「口切りの茶事」と称して、懐石の間に碾茶を石臼で碾いて抹茶を作り、それを用いて濃茶を供する茶家があると聞きます。
碾茶の質もさることながら、実は石臼の良し悪しが抹茶の出来具合に多大な影響を及ぼすと云います。

機会があれば、石臼をゴロゴロ回して、碾きたてのお茶を飲んでみたいものです。(まぁ、無理でしょう!)
でも、宇治へ行けば体験教室があるかもかも…ですね。(^O^)

そうそう、TV番組ではこんなお話もありました。
茶師の心構えとして、お客(茶家)の好みに合わせて調整することが大切なので「こだわりを持たないことがこだわり」とか…。

ところで、江戸時代中期に制定された七事式の一つ「茶カブキ之式」には、茶師として「上林(かんばやし)」と「竹田」の名が出てきます。
茶師としての「竹田」は、その後どうなったのでしょうか…。

香道の心得 ◆神無月◆ (2)

小草(おぐさ)香は単純だが望みの花を自由に選び組めるからより身近なものに感じられる。貫之がをみなへしの五文字を句の頭に詠んだ

ぐら山ね立ちらしく鹿の にけん秋をる人ぞなき

よりは女郎花香が作成された。これは詠歌の基となっている五文字に香五種を当て歌一首を表現させる。これらを聞き覚え、後にいづれか一種と客香を聞き、二方のどちらが客香で他方の一炷は小倉山とか鳴く鹿のとかを判じるという工夫された香式をとっている。

「女郎花香」

◆香は六種
として 二包で内一包試 <小倉山>
として 同断 <峯たちならし>
として 同断 <なく鹿の>
として 同断 <へにけん秋を>
として 同断 <知る人そなき>
として 一包で無試

◆聞き方
先ず、を、み、な、へ、しの五つの試みを聞いて香りを覚えます。
次に、を、み、な、へ、しの五包から一包取り、客一包と打ち交ぜて炷き出します。

[歌]古今和歌集 巻十物名439
をぐら山みねたちならしなくしかの へにけん秋をしる人ぞなき  貫之

◆メモ
・記紙には、ウと一句を記します。
・記録には、本香の出のところに歌を二行に書き、出た句に合点を掛け、ウが先に出れば合点の右に、後に出れば合点の左にウを書くようです。

※京都・嵯峨の小倉山と聞いて思い浮かぶのは、紅葉の名所、そして定家が撰んだ「小倉百人一首」あたりでしょうか…。