寒露

秋晴れの穏やかな一日、何処からともなく金木犀の香りがほのかに漂ってきます。
今日は、二十四節気の一つ「寒露」、七十二候では「鴻雁来」にあたり、旧暦では仲秋の最後の八月二十九日、明日からいよいよ晩秋の九月となります。

暦を見ると、寒露(かんろ)は「朝夕の冷え込みが一段と増し、秋草の葉に冷たい露がつくようになる」とあります。
また、鴻雁来(こうがんきたる)は「雁が北から飛来し始める」とあります。
暑い暑いと云っていたのに、いつの間にかそんな季節がやってきたようです。

9月中旬に咲き出した椿「西王母」の花は一休み、替って「炉びらき」が咲き出しています。
この椿も早咲きで知られている品種ですが、花は小振りです。

茶の湯の「炉開き」は、やはり11月の声を一つの目安としているように思いますが、歴史的には「亥の子餅」を食すると云う日、即ち、亥の月(旧暦十月)、亥の日(今年は11月15日)としていたようです。(亥の子餅と玄猪包についてのウンチクはまたの機会に…)

※炉びらきの花

香道の心得 ◆神無月◆ (4)

 これら聞香の座を展開させるには、諸具と幾通りかの作法が考案されていて、香を炷く香元(こうもと)、記録を執る「筆者」盤物の場合は「盤者」との三者により行われる。これは乱箱―聞香炉・小札箱・火道具と建・銀葉箱・志野祈・折据等を納める懸子形の箱―、文台を用いる基本の作法となり、美術的価値の高い香具、幽玄な香木の香り、典雅な聞香の組織と華麗な作法を一体化させ雅な世界を繰り広げることができる。これより派生した志野袋を結ぶ四方盆、重香合を扱う長盆の作法(その室が茶席で開炉の時季なら四方、風炉の時季なら長盆)は広間で行うより小間の方が似付かわしく、手前はその亭の主人が為し、記録は客に願うのを習いとするから乱箱の作法とは一際異なった楽しさを味わうことが出来る。もとより具と作法をかなり簡略しているから自と香数も少なく記録もし易い組香をすることになり、小草・千種・菊合香などは容易に行い得る。そして困難であろうが、秋草の、絵付・絵様のある香炉・火道具の畳紙や蒔絵の施した重香合・火取香炉を取り揃えられるならさらに香趣を高めよう。尚この場合、奉書に替えて色紙か短尺に記録するのもよい。

※「志野袋を結ぶ四方盆、重香合を扱う長盆の作法」は「乱箱の作法」と共に、考えなくても手が動いてくれるように、ただただ稽古あるのみなのでしょうか…。