時雨

時雨の一日、落葉も濡れています。

『茶道雑誌』11月号に「日日是好日-「道」の始まり-」と題した森下典子のエッセイが掲載されていました。
その中に映画撮影時のセットのお話があります。

撮影には樹木希林の知り合いの一軒家が使われたそうで「大きな木造の家の庭に、八畳の茶室が増築され、縁側の向こうに緑豊かな茶庭が出来上がった。稽古場の長押に掛ける「日日是好日」という横額の書は、樹木さんのアイデアで、京都の小学五年生の女の子が書いてくれた。」と本文にはあります。

「へぇ~、そうなんだ!」

新刊に『好日日記』があることを知り、早速図書館に予約を入れました。
自然体でありながら巧みな文章には思わず吸い込まれてしまいます…。

香道の心得 ◆霜月◆ (2)

 組香においてもこうした情景を見逃すはずはなく、後拾遺集、源頼実の「木葉降る宿は開き分く方ぞなき時雨する夜も時雨せぬ夜も」を証歌にして「時雨香」を作成した。歌意は、「落葉が雨の如くに」と題して「木の葉が時雨のようにはらはら音をたて散る家は、時雨が降る夜も降らない夜も、一体時雨の音なのか落葉の音なのか聞き分けることが出来ない」である。歌五句に合せて五種の香を二組作り、これを前後二度炷き、いづれといづれが同香かを聞き当てるという形を取っている。無聞の人には歌の意味からこの一首を記録紙に記すのであるが、実際には歌と反対に、落葉の音と時雨の音を聞き違えない如く、香りの上でも是非聞き分けたいものである。

「時雨香」は同名の組香が二つあり、同じ証歌でもって組まれています。

【時雨香】(上記の組香)

◆香は五種
一として 二包で無試
二として 同断
三として 同断
四として 同断
五として 同断

◆聞き方
一~五を各々一包づつ計五包を一結びにして二組用意します。
①この内の一組五包を打ち交ぜて炷き出し、これを[試み]とします。
②後出香として、残りの一組五包を打ち交ぜて炷き出し、[試み]に合わせて「つるび」で答えます。

◆記録
記紙には、先ず一、二、三、四、五と書いておきます。(順そのままに!)
そして、後出香で上の[試み]に合わせます。
(例)
一 二 三 四 五(初めに書いておきます)
二 一 五 四 三(後出香の聞き)

意味は、後出香の一炷目は、初め一~五と書いた香の炷目と同じ香と聞いた。
同様に、後出香の二炷目は、初め一~五と書いた香の炷目と同じ香と聞いた。
同様に、後出香の三炷目は、初め一~五と書いた香の炷目と同じ香と聞いた。
同様に、後出香の四炷目は、初め一~五と書いた香の炷目と同じ香と聞いた。
同様に、後出香の五炷目は、初め一~五と書いた香の炷目と同じ香と聞いた。

記録紙で、無聞(全外れ)の人には、聞きの中段に和歌が一首書かれます。

◆証歌
この葉散る宿は聞き分く方そなき時雨する夜も時雨せぬ夜も  頼実
(後拾遺和歌集 第六冬 源頼実(よりざね))

※『国歌大観』では、
| 後拾遺和歌集 第六冬 381・382
| 神無月深くなりゆく梢より志ぐれてわたるみ山べのさと落葉如雨といふ事をよめる 源頼實
この葉散る宿は聞分く事ぞなき時雨する夜も時雨せぬ夜も

※「方」と「事」の二系統あるようです。(「方」は方法の意)

◆メモ
執筆が合点を掛けるのに少し時間がかかりそうですが、左手の指で横に「つるび」を追っていけば、さほど面倒な事ではないとか…。

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【時雨香】(もう一つの組香)

◆香は五種
木の葉散る  として 二包で内一包試
宿は聞き分く として 同断
かたそなき  として 同断
時雨する夜も として 同断
時雨せぬ夜も として 同断

◆聞き方
試みを聞いた後、出香五包を打ち交ぜ炷き出します。(五炷とも正聞きです)

※出香五包を打ち交ぜ内一包だけ取り聞く法もあるようです。また、追加の一炷も有りとか…。

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ツワブキ(石蕗)が濃密な香りを漂わせています。