冬月香

冬の組香の一つに【冬月香】があります。
冬の月と聞いただけで、冴え冴えとした月の光に身も心もなんだか引き締まりそうです。

◆香は四種
霜として 四包で内一包試
雪として 同断
氷として 同断
月として 一包で無試

◆聞き方
霜・雪・氷の試みを終えた後、出香十包打ち交ぜて炷き出します。

◆記録紙
客香(月)を霜と聞き違えば、霜の歌を聞きの中段に書きます。
客香(月)を雪と聞き違えば、雪の歌を聞きの中段に書きます。
客香(月)を氷と聞き違えば、氷の歌を聞きの中段に書きます。

[霜の歌]
袖のうへ露をば知らず宿りしに ぞ氷りてと見えける

[雪の歌]
朝ぼらけ有明のと見るまでに 吉野の里にふれる白

[氷の歌]
山の井の結びし水やるらん 宿れるの影も残らず

◆メモ
この組香では、客香(月)をちゃんと聞き分けて、願わくば全当りになるに越したことはありませんが、月を別香と聞いても歌が聞きの中段に書かれて一つの景色となるので、聞き外しても(むしろ、聞き外した方が?)記録紙は楽しめる、そんな思いやりに満ちた組香と云えそうです。

引かれている和歌の出典は次の通りです。
[霜の歌]
| 新続古今和歌集 巻第六冬歌 634
| 前大納言為定
袖のうへの露をばしらずやどりこし 月ぞ氷て霜とみえける

[雪の歌]
| 古今和歌集 巻第六冬歌 332
| 坂上これのり(是則)
あさぼらけありあけの月と見るまでに よしののさとにふれるしら雪

[氷の歌]
この歌は出典不明となっています。でも、似たような歌があるにはあります。
| 土御門院百首 63
| 氷
山の井のむすびし水や結ぶらん こほれる月の影もにごらず


※麻布・香雅堂からの案内はがきです。うり坊が可愛いです!

香道の心得 ◆師走◆ (2)

 歳暮香のように年に一度限りの組香をと思うと、先ず平生あまり用いない香を当てることを考える。そこで香箪笥や櫃を開けてあれこれ探り、客香にはまだ披露していない伽羅(きゃら)を刻もうとか、の香にはこの羅国、には真那蛮を、とすればに何を選んだらよいものかと思案したりする。
こうした沈水香は東南アジアの産物で、中でも伽羅の良木は主としてカンボジアに近い旧南ベトナムの高地に産出すると言われているから、現状では容易に入手出来なくなったのもやむを得ない事である。従って、古人の教示した馬尾蚊脚―それほど細くしても香木の香りは十分に立つという―の語も、香木はなにせ消耗品である。微量にして大切に扱えと戒めているようにも聞こえる。在来の伽羅は一層貴重になってきた。