香の十徳

月刊誌『なごみ』に今年1月号から連載されていた志野流香道・蜂谷宗苾若宗匠のエッセイ「香道絵巻」が12月号で終わりました。
最終回のタイトルは「香りで地球をラッピング」。
タイトルを見て、ふっと頭に浮かんだのは「一碗からピースフルネスを」という裏千家大宗匠の言葉です。
言葉は異なりますが、意味する所、寄せる思い、目指す処は、なんとなく同じような感じがしているのですが…。

「香道絵巻」のコピーをつらつら眺めていたところ、2月号に「香十徳」が載っていました。
香の十徳は、北宋の詩人・黄庭堅(1045~1105)が詠んだもので、日本伝来後は一休禅師によって広く紹介されたと記してあります。
「香十徳」を以下に引用します。

感格鬼神 感覚を研ぎ澄ます
清浄心身 心身を清浄にする
能拂汚穢 汚れを取り除く
能覚睡眠 眠気を覚ます
静中友成 孤独感を癒す
塵裏偸閑 多忙時でも心を和ます
多而不厭 沢山あっても邪魔にならない
少而知足 少量でも芳香を放つ
久藏不朽 何百年を経ても朽ち果てない
常用無障 常用しても害がない

掲載写真の15世家元・信好斎宗意(1803~1881)筆「香十徳」の掛物は、かって拝見したような記憶があります。

クチナシ(梔子)の実がだんだんと赤くなっています。

おせち料理「栗きんとん」の黄色着色料として使おうと思っているのですが、年末までに間にあうことを願っています。

詩歌では「口無し」とかけていうことが多いそうです。
山吹の花色衣ぬしやたれ とへどこたへずくちなしにして (素性法師)

また、俗に碁盤、将棋盤の脚の部分を「くちなしあし」というのだそうです。
「助言は無用」の「口無し」を梔子の実にかけて、と辞書にはあります。

その「口無し」ですが、果実の頂部がとがり、口が開いていないので「口無し」と呼ばれるとか…。(^O^)