三友

三友といえば、よく知られているのは「歳寒三友」。
厳寒の中でも強い生命力を保つ「松・竹・梅」の三種を指して云うことが多いようです。

茶の湯では、お道具に「三友棚」と呼ばれる炉用の棚があり、お茶会でも見たことがあります。
松と竹と梅が意匠に取り入れられている小棚で、三千家の合作となっています。
この棚の歴史は思っていた以上に古く、諸本を見ると明治時代に考案された棚となっています。

※裏千家茶道教本より

明治時代初期に、時の大徳寺管長・牧宗和尚が三千家の融和(ここが大切!)を図って山内の松と竹を提供し、表千家・碌々斎が松材で円形の天板と四角の地板をふき漆にして好み、裏千家・又玅斎が竹の二本柱(勝手側に小枝付き)を好み、武者小路千家・一指斎が天板の面にこぼれ梅の蒔絵を好んだ作りの棚となっています。

棚は四つ作られ、一つは大徳寺に、他の三つは三千家にそれぞれ分けられたようです。
松竹梅の三友と三千家の三友がかけられているのでしょうか…。

裏千家には円能斎好みの「三友之式」がありますが、この式では茶・花・香が三友となっているようです。
他にも、なんだか色々ありそうな「三友」です。

そういえば、京都・東京に茶懐石出張料理のお店「三友居」がありました。
こちらは「三友」に「居」が付いていますが、白居易の漢詩「北窓三友」で人生の友と賞した三友「琴・酒・詩」に由来し、人生を豊かにする場所であって欲しいとの思いから「三友居」と名付けられたとか…。

琴を弾き、酒を酌み交わし、詩を吟ずるなんて、風流の極みです………ね。

香道の組香には「三友香」があります、
歳寒三友の「松・竹・梅」に因んだ組香のようです。

詩歌をちこち 【三友香】

|『古今和歌集』巻第一 春歌上 24
¦ 寛平御時きさいの宮の歌合によめる   源むねゆきの朝臣
ときはなる松のみどりも春くれば 今ひとしほの色まさりけり

〔大意〕永遠に変わらない松の緑も、春が来れば、もう一段と染め上げたように色が深くなることだ。

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|『新古今和歌集』巻第七 賀歌 715
| 延喜御時屏風歌   貫之
としごとにおひそふ竹のよよをへて かはらぬ色をたれとかはみん

〔大意〕毎年毎年生えては増えてゆく竹の節が、何代たっても変らない緑色をして栄えているのを、わが君以外の一体だれのことと見まいらせようか。

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|『拾遺和歌集』巻第一 春 14
| 同じ御時御屏風に   みつね
ふる雪に色はまがひぬ梅の花 かにこそにたる物なかりけれ

〔大意〕降る雪に、梅の花の色はまぎれてしまった。だが、梅の花の優れた香りに匹敵するものは、他にはまったくない。

※和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
※大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

*源宗于(みなもとのむねゆき)/紀貫之(きのつらゆき)/凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)