名城市民茶会2019秋

快晴の名古屋城へぶらりと出かけました。
名古屋城の広場では「菊花大会」、茶苑では「秋の名城市民茶会」が開催されていました。

写真は、大株立の菊ですが、根元を見るとなんと一株です。
枝分かれさせてたくさんの花を咲かせる為には、想像を越えるノウハウが山ほどありそうです。
「菊花大会」と銘打つだけあって、広場には様々なタイプの菊が展示されていて、入場門脇には定番の菊人形も飾られていました。(東門は家康でした)

市民茶会は三席の内、裏千家・庄司宗文氏と志野流・堀口宗然氏の席に入ってきました。

裏千家の席では、庄司氏の楽しいお話もさることながら、取り合わされている道具組の妙には、いつもながら感心し心躍るものがありました。
茶器は表千家・即中斎好みの「春秋茶器」を敢えて用い、蓋の菊紋で祝意を表されたようです。(春秋茶器は、春は槍梅(黒地)、秋は菊紋(赤地)の替蓋が付いています。)

棚は裏千家14代淡々斎好みの尚歌棚。(歌を尚(とうと)ぶ棚の意)
天板と地板の対角の角を切り取って色紙に見立て、柱は短冊型の桐板と、筆を表す竹で作った棚となっています。(現在でも竹ペンがあるように、竹の先を細く切り揃えれば筆になるとか…。)
そう云えば、淡々斎が創案した「唱和之式」には、和歌を短冊に認めて詠ずる所作が組み込まれていました…。(^O^)

寄付きに飾られていたお道具の中で、一目で釘づけになったのが大樋焼9代作の赤楽茶碗・光悦「毘沙門堂」写し。

光悦の本歌とは色合いが若干異なる部分もあるようですが、惚れ惚れとする美しいお茶碗でした。

志野流・野点席の端折傘に掛けられていた短冊は幽求斎筆「天高氣清」(天高くして気清し)。
『禅語大辞典』には、「天が高いほど大気はすがすがしく澄みわたる。高邁な精神に裏打ちされた詩文などを表する言葉。」とあります。
今日の青空、今日のお席にぴったりの禅語でした。(^O^)

詩歌をちこち 【替松虫香】 

『古今和歌集』巻第四 秋歌上 201
| 題しらず   よみ人しらず
秋ののに道もまどひぬ松虫の こゑする方にやどやからまし

〔大意〕秋の野の美しさにひかれているうちに、日も暮れて、道も分らなくなってしまった。人を「待つ」という名のその「松虫」のする方に、宿を借りよう。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)