秋季茶会
錦秋の一日、名古屋・八事の「八勝館」で催された東海茶道連盟の「秋季茶会」に行ってきました。
紅葉が美しいお庭を望むように三席が設けられ、終日賑わっていました。
席主さんは、濃茶席が裏千家・伊藤宗観氏、薄茶席が表千家・小栗宏子氏、薄茶(野点)席が志野流・蜂谷なをみ氏でした。
各席とも趣向を凝らした道具組となっていました。
お菓子はそれぞれ椿餅(川口屋)、悠久(両口屋是清)、山路の色(松華堂)で何れも美味でした。
個人的に一番嬉しかったのは、濃茶席の待合に掛けられていた「三船の図」(光文筆)。
「三舟の才」の故事に因む画だったので、思わず喜んでしまいました。
赤紅葉が映える嵐山・大堰川に浮かぶ三船に向って川岸から源経信でしょうか、船を呼び戻すように佇んでいる構図となっていました。
三船は龍頭鷁首(りゅうとうげきしゅ)の二隻と御座船の一隻のように見受けましたが…。
盤物組香「三舟(さんしゅう)香」を思い出してしまいました。
※点心です。
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詩歌をちこち 【三代集香】
|①『古今和歌集』巻第二 春歌下 113
| 小野小町
花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに
〔大意〕花の色は衰えてしまったことだなあ。なすすべもなく空しく、わたくし自身がこの世でもの思いをしながら過している間に、長雨が続いて。|②『後撰和歌集』巻第四 夏 209
| 桂のみこのほたるをとらへてといひ侍りければ、わらはのかざみのそでにつつみて (よみ人しらず)
つつめどもかくれぬ物は夏虫の 身よりあまれる思ひなりけり
〔大意〕包むのだけれども、隠れないものは、夏虫が身から余って発する火のような我が「思ひ」であるよ。|③『拾遺和歌集』巻第一 春 1
| 平さだふんが家歌合によみ侍りける 壬生忠岑
はるたつといふばかりにや三吉野の 山もかすみてけさは見ゆらん
〔大意〕立春になったというだけで、まだ雪に覆われているはずの吉野山も、霞んで今朝は見えるのだろうか。*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)
※小野小町(おののこまち)
※壬生忠岑(みぶのただみね)