西王母の花

早咲きで知られる椿の品種「西王母」が開花しました。
今日は最高気温27.7℃の「夏日」で、椿はちょっと早い気もしますが、西王母の開花は毎年9月中です。

今年はコロナ禍の影響で、年内の大寄せ茶会は概ね中止となっています。
西王母もそうですが、茶花の需要が随分減っているのではないでしょうか。
思えば、コロナ禍はこの業界にとっても大変な災いで、茶会がなくなれば付随する数々の大口需要がなくなってしまいます。
茶舗、菓子舖をはじめとして、花屋、催行会場、茶道具屋、料理・仕出し屋等々、関連業界は大きな影響を受けていると思います。

コロナ禍が早く収束することを切に願っています。

ところで、西王母。
中国西方の崑崙山に住むという仙女で、長寿を願う漢の武帝に三千年に一度花が咲き実を結ぶ仙桃を献じたという伝説があります。
また、西王母に対して、男の仙人を束ねる東王父の伝説もあり、矢張り椿の品種としてその名があります。

三千年に一度花が咲き実を結ぶ仙桃といえば、組香「三千年(みちとせ)香」を思い出してしまいます。

|『拾遺和歌集』巻第五 賀 288
| 亭子院歌合せ みつね(凡河内躬恒)
みちとせになるてふもものことしより 花さく春にあひにけるかな
〔大意〕三千年に一度実が成るという桃が、今年から花が咲くというめでたい春に、ちょうど巡り合ったことだ。

〔出典〕和歌『新編国歌大鑑』(角川書店)/大意『新日本古典文学大系』(岩波書店)

「三千年香」の証歌自体は、和歌の五句目が「あふぞうれしき」になっているようですが、歌からも解る通り「桃の節句」あたりに行われることが多い組香かと思います。

【三千年香】

◆香は五種
一として 一包で無試
二として 二包で無試
三として 三包で無試
四として 四包で無試
五として 五包で無試

◆聞き方
全十五包を打ち交ぜ炷き出します。(すべて無試ですが香数の違いから聞き分けます。)

※記録紙には当りばかりを記し、聞きの中段に歌の句が書かれます。点数の処には一句九、二句四、一首全、三のように記されます。
一が当たれば みちとせに
二が二つとも当たれば なるてふ桃の
三が三つとも当たれば ことしより
四が四つとも当たれば 花咲く春に
五が五つとも当たれば あふぞうれしき

全当りで「一首全」を得た人には「仙桃」が授けられる、というようなことはありませんが、全十五炷を当てるなんてすご過ぎます。
そういえば、慣用句に「西王母が桃」がありました。

意味は「珍しくえがたいもののたとえ。また、長寿のたとえ。」と辞書にあります。
一度でいいから、全部当ててみたいものです。ハイ。(^^)