降りみ降らずみ

神無月降りみ降らずみ定めなき 時雨ぞ冬の始めなりける

今日15日は旧暦の十月一日で、亥(い)の月・神無月の始まりです。
立冬は今月7日でしたが、3ヵ月単位で括った季節の冬は旧暦の十月~十二月とされていましたから、いよいよ冬ということになります。

冒頭の歌は『後撰和歌集』巻第八冬445の歌(よみ人しらず)で、十月の情景を詠んだ歌としてとても印象に残っています。
〔大意〕十月になっても降ったり降らなかったり定めのない、そのような時雨こそが実は冬の始まりなのだよ。
※出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

まだ、時雨らしい時雨は降っていませんし、今日のように20℃を超える春に似た穏やかで暖かい日もあることから旧暦十月は「小春」とも呼ばれています。
とはいえ、落葉樹は急速に葉の色を変えて落ち始めていますし、地植えの草花も冬枯れに入りつつあります。
歌のように、降りみ降らずみ時雨するときは近づいているようです…。

昔から、冬となる旧暦十月の最初の亥の日には「炉開き」をする習いがあると聞いています。
お茶の世界では、炉開きは「柚子の色づく頃」と云われている流派もあるようですが、概ね「立冬」が一つの目安になっているように感じています。
尤も、お茶教室では区切りがいいからでしょうか、11月になったら早々と炉に切り替えて、炉のお点前を稽古するところもあるようです。

今年は、明日16日が旧暦十月最初の「亥の日」に該当します。(今年は閏四月があった関係で遅めです。)
我家でも遅まきながら、丸畳を炉畳に替えて、神無月を迎えました。

半年ぶりに炉の蓋を開け、底に入れた炉灰の上に五徳を据え、手順に従って五徳の高さを調節します。
それから、濡灰をしっかり撒いて、四隅を掻き揚げて炉の準備完了です。

※写真に写っている木枠は「焦げ縁」です。なお、爪の位置は表千家流と裏千家流では左右真逆となります。

明日は、旧暦十月の亥の日「亥の子餅・玄猪餅」の日です。(^^)

公園のクチナシ【梔子】の実が色づき、膨らんでいます。