ヒオウギの花

ヒオウギ【檜扇】の花が咲き出しました。

剣状の葉の重なりが、王朝人が愛用した檜扇を開いた形に似ることから、この名があるヒオウギです。

ヒオウギは京都・祇園祭を飾る花としても知られています。

今月17日・24日の山鉾巡行はコロナ禍のために今年も中止となっていますが、ヒオウギは悪霊・疫病退散の願いを込めて、各所に飾られているに違いないと思っています。

祇園祭でヒオウギが飾られる理由については、ヒオウギがとても強くて生命力に溢れる植物だから…なんて今まで思っていました。
実際、ヒオウギの真っ黒な種(うばたま【烏羽玉】・ぬばたま【射干玉】)の出芽率は100%といっていいほど、強い生命力を持っているからです。(全て発芽した時は感動しました!)

表千家の機関誌『同門』7月号に、ヒオウギについて興味深い記事が載っていました。

松谷茂氏(京都府立大学客員教授・京都府立植物園名誉園長)が「京都北山 花景色」と題して「ヒオウギ」について蘊蓄を余すところなく記されている中に、ヒオウギと祇園祭との関わりが示されています。

「科学的知見がほぼなかった時代、原因が分からず大勢の死者が出るのは怨霊のせいで、この悲惨な状況から脱却するには、神仏に祈って悪霊を鎮めるしかない。疫病退散を祈った御霊会(ごりょうえ)が祇園祭の起源とされ、各家庭の門前にヒオウギが飾られた。

ヒオウギは檜扇。ヒノキの薄板で作った扇。この風で悪霊よ退散せよと追い払う、祈る気持ちをヒオウギに込めた。

ヒオウギは、日本神話誕生などを記した歴史書『古語拾遺(807)』に「烏扇(からすおうぎ)」の名で登場。田んぼに発生したイナゴの害を駆除するに「烏扇(からすおうぎ)を以(も)ちて之を扇(あお)ぐべし」とあり、これが悪霊悪疫退散を祈願した祇園祭に結び付いた、と解釈します。」

なるほど、烏扇ですか…。
農薬が無い時代ですから、イナゴによる虫害は切実な問題だったはずです。

烏扇は檜扇の古名。(種が烏のように黒いから…)

そういえば、香道の札銘[夏之部]に「烏扇」がありました。
「烏扇」の読みは「ひおうぎ」、昔なら「ひあふぎ」「ひあふき」でしょうか。(^^)

京都・祇園祭には宵山を含めて何度か行きましたが、とにかく暑くて暑くて大変でした。
最近は、BSテレビの生中継を見るに限る!と決め込んでいます。

来年はコロナ禍も収束して、山鉾巡行が以前のように実施されることを切に願っています。