中秋の名月2021
月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月
今日は旧暦の八月十五日。
古くから十五夜・中秋の名月と誉めそやされている名月の日です。
平時なら、各地で観月会が催されるところでしょうが、コロナ禍では集まりもままなりません。
ならば、ススキと萩を花瓶に入れ、ちょっとしたお飾りをして、お月見団子でも頂戴しながら、戸別での名月鑑賞です。
当地の「だんご」は芋名月にちなんで丸ではなくお芋の形をしています。
亀屋芳広の米餅菓子「月うさぎとお月見」は三色でカラフルです。
ふいと「月」に因んだ組香に興味が移り、少し調べてみることにしました。
志野流香道の組香目録には、お月様の「月」の文字が入っている組香が結構あるようです。
花月香、新月香、雨月香、雪月花香、雲月香、月見香、名月香、望月香、替花月香、名月香、空月香、松月香、冬月香、夏月香、海月香、秋月香、新月見香、替雪月花香
月と云えば秋ですが、上記の内で「名月」の頃を題材とした組香は、新月香や月見香など片手以上の数はあるようです。
また、冬月香や夏月香は当該季節の組香として、花月香や雪月花香などは秋だけでなく他の季節でも楽しめる組香として、月の組香はバリエーション豊かに取り揃えてあるようです。(お店の品物ではありませんが…)
パソコンがない時代に、エクセルのようなソフトがない時代に、仕様がすべて異なる二百数十種もの組香を選び出し体系化する作業が、よくぞ行なわれたものだと、先人の並々ならぬ知見にただただ脱帽です。
さて、この時季に好んで催される定番の組香と云えば、矢張り【月見香】でしょうか。
◆香は二種
月として 四包で内一包試
客として 三包で無試
◆聞き方、答え方
試みを終えた後、出香六包を打ち交ぜ、内から三包を取り出し炷き出します。
香の出により名目があり、記紙に書き付けて出します。
月月月と聞くは 十五夜
月月ウと聞くは 待宵
ウ月月と聞くは 十六夜
月ウ月と聞くは 水上月
ウ月ウと聞くは 木間月
ウウ月と聞くは 残月
月ウウと聞くは 夕月夜
ウウウと聞くは 雨夜
ものの本には、名目の解説が丁寧に書かれていますが、ウを水面に見立てたり木立に見立てたりで、実によく考えられた名目ばかりです。
また一つ、月見の組香として、矢張り名月の頃が何倍も楽しめそうな【新月見香】も面白そうです。
◆香は四種
春月として 二包で内一包試
夏月として 同断
秋月として 一包で無試
冬月として 二包で内一包試
◆聞き方
三種の試みを終えた後、本香四包を打ち交ぜて炷き出します。
試みに合わせ、記紙に春夏秋冬の月で書き付けます。
記録紙の本香の処には、以下の名目で認めます。
春月を 朧月 と書く
夏月を 短夜の月と書く
秋月を 名月 と書く
冬月を 霜夜月 と書く
名月を聞き当てることを眼目とします。
◆記録紙
| 短夜月 名月 朧月 霜夜月
名 夏月 秋月 春月 冬月 全
名 夏月 秋月 冬月 春月 二
◆メモ
シンプルな組香ですが、春月は朧月、夏月は短夜の月、秋月は名月、冬月は霜夜の月、と想像しただけで光景が浮かんでくる名目は風流の極みです。(^^)
※お菓子のラベル
今夜は生憎の小雨混じりの曇り空。
中秋の名月は雲の向こうでした。