菊花開・重陽の節供
今日10月13日は、七十二候の「菊花開(きくのはなひらく)」。
文字通り、菊の花が咲き始める、の意です。
残念ながら、我家の鉢植えの嵯峨菊は蕾こそ付いていますが、開花するまでにはもう少し日数が必要です。
今日は旧暦の九月八日。
明日九月九日は、陽数(奇数)で最大の数九が二つ重なる「重陽の節供」(別称「菊の節供」)です。
現行の新暦(グレゴリオ暦)9月9日では菊の花と云われてもピンときませんが、今の時季なら菊は十分花開いています。
旧暦の習いを大切にされている処では、明日は「重陽の節供」の祝い日ということになりそうです…。
元は旧暦とされる行事は、現今、新暦の日付、ひと月遅れの日付、旧暦の日付の三通りでフレキシブルに行われています。
先日10月9日には、奈良・春日大社で月遅れの「重陽の節供祭」が行なわれ、志野流香道によって献香之儀が執り行われたようです。(^^)
七十二候「菊花開」の日なので、キク科のコウヤボウキ【高野箒】の花でも…。
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「四季」で楽しむ組香⑤ 【四季比翼香】
比翼と云えば、比翼の鳥。
伝説上の鳥で、雌雄各一目一翼で常に一体となって飛ぶというもの、また雌雄が翼を並べて飛ぶというもので、男女の深い契りの例えとなっています。
白居易の「長恨歌」では、「在天願作比翼鳥 在地願為連理枝」と詠われ、「比翼連理」なる熟語となっています。
◆香四種
雉子として 三包で内一包試
水鶏として 同断
雁金として 同断
千鳥として 同断
但し、当季のものは客として無試
※春:雉子(きぎす)、夏:水鶏(くいな)、秋:雁金(かりがね)、冬:千鳥(ちどり)
◆聞き方
試みは当季以外の香三種です。
出香八包に当季の香二包を加え、十包にして打ち交ぜ炷き出します。
聞き方は「炷合(たきあわせ)」の外に、常の席では二炷開き(二炷単位)とすれば良いようです。
二炷同香と聞くは是を比翼とし、記録紙の聞きの中段に「比翼何双」と書きます。
当たり比翼の点数は、当季と当季以外では異なっています。
◆記録紙(当季を冬:千鳥として)
| 千鳥 雁金 雉子 水鶏 千鳥
| 雉子 雁金 水鶏 千鳥 千鳥
名 千鳥 雁金 雉子 水鶏 千鳥 比翼二双 全
| 雉子 雁金 水鶏 千鳥 千鳥
志野流香道先代家元・蜂谷宗由宗匠が新聞紙上に連載された「香道一口メモ」では<恋の香>として「四季比翼香」があげてありました。
「四鳥を題にして、それぞれ二片ずつ、計八包を聞く式」と書かれています。
手元の資料には「昔の聞き」とありますが、炷合せ、そして札聞きと推察しました。
札表は、初恋、忍恋、契恋、祈恋、待恋、逢恋、暁恋、増恋、馴恋、別恋
札裏は、雉子二枚、水鶏二枚、雁金二枚、千鳥二枚
この場合には、出香は八包となり、最大で比翼四双ということになりそうです。
比翼ですから、流石に「失恋」はあり得ません。m(__)m
◆メモ
資料には、更にもう一つ、「近代の聞き」として四種二包の八包のほかに、同じく四種二包の八包を組み置いて、合わせて計十六包を記紙で答える法もあるように書かれています。
この組香は経験したことがないので、やり方は想像するしかありません。
「四季比翼香」は、四季を代表する鳥「雉子・水鶏・雁金・千鳥」を題材にして、同種二包を「比翼」と結びつけるところに最大の特徴があり、遊び心に満ちた面白い組香になっていると思います。(^^)
趣旨に沿って楽しく遊ぶには、とてもハードルが高い組香と云えそうです。ハイ。