壺飾り

久しぶりに茶壷の緒を結んでみました。
「炉開き」に合わせて行なわれる「口切の茶事」に関わる習い事の一つになっています。
尤も、口切の茶事に招かれたことも、招いたことも有りませんが…。

「口切の茶事」では、茶師から届けられた茶壷の封を切り、亭主(客人を招く主)自ら臼で挽いて新茶を供する習いになっていますが、現代では茶舗の石臼で挽いた抹茶が使われることが多く、圧倒的に美味しいと思います。

昔は、抹茶はお店で買えるようなものではなく、自分で挽くしかなかったと云いますから、「口切の茶事」は昔の作法を今に伝えていることになります。
現在では、家元、そして余程の数寄者に限られた茶事において受け継がれているように思います。

裏千家では、小習事の中に「壺荘」があります。
茶壷の緒の結びとしては、正面は長緒で真の結びを、客付は乳緒で行の結びを、勝手付は乳緒で草の結びを、それぞれほどこすというものです。

中立の間に、壺の緒を結ぶことになっているようですが、慣れれば難しくはないと思います。
私はと云えば、『茶の結び緒』(淡交社)を傍らにおいて結びに挑戦というレベルです…。

ところで、今年は11日が旧暦十月(亥の月)最初の亥の日でした。
無病息災・子孫繁栄を願って「亥の子餅」を食すのが古くからの習いとなっています。

茶の湯では「炉開き」の日とされています。
この日は炉に火を入れて釜の湯を沸かしますが、火にまつわる事故が起きないように、火を鎮める火伏(ひぶせ)の事物・伝承をいろいろ紐づけて、亥の日の「炉開き」となっているようです。

十二支の「亥」は猪とされています。
京都・愛宕(あたご)神社は火伏の神として知られていますが、「火迺要慎」の阿多古祀符のご利益は絶大です…。(^^)

その愛宕神社の神様のお使いは猪と云われています。
謂れは、創建した和気清麻呂が猪に助けられたという故事からとか、神社が京都の亥の方角にあるからとか、陰陽五行の「水」性を亥が象っているからとか(多少のずれは気にせずに)、いろいろあるようです…。

水を象る八卦の坎(カン)が裏千家流では風炉の灰型に、志野流香道では火取り香炉の灰に刻まれる習いがあります。
火伏の願いが込められていると思われます。

京都では、今でも炬燵やストーブの火は旧暦十月(亥の月)最初の亥の日としている処があるように聞いています。

これも千年の都・京都ならではの習わし、伝統文化と云えましょう。(^^)