三葉松(さんようしょう)

ひと昔も前のことであったと思います。
高野山の宿坊に泊って、壇上伽藍・金剛峯寺・奥の院などを見学・参拝した際に「三鈷(さんこ)の松」なるものが囲いの中にありました。

弘法大師・空海が唐から帰朝するにあたり、仏具の三鈷を東方に向かって投げたところ、紫雲に乗った三鈷は海を越え、今で云う高野山の松の木に掛かっていて、その松は「三鈷の松」と呼ばれるようになったとかとか…。

マツの囲いの中には、マツの針葉が二本と三本のものが混じって落ちているらしく、三本のものを発見したら四葉のクローバーよろしく幸運に恵まれる、という風であったように記憶しています。

その時は「ふ~ん」と深く考えもせず、針葉が三本のものが落ちていないか少しの間探したような覚えがあります。
でも、どうやら見つからなかったようです。(見つけたという記憶がありません!)
以来、針葉が三本の松(三葉松)のことは頭の中からすっかり消え去っていました。

表千家同門会誌『同門』9月号に載っていた、京都府立植物園名誉園長・松谷茂氏の「京都北山 花景色」シリーズの「三葉松-マツの仲間-」を読んで、記憶の底から高野山のことが蘇ってきました。

記事によると、マツの針葉本数は二本、三本、五本と種によって異なり、それぞれ二葉松、三葉松、五葉松と分類されるが、日本には三葉松は分布せず、二葉松と五葉松のみが分布する、とあります。

日本には自生する三葉松は存在しないものの、社寺などには植栽された個体があるようです。
記事には、三葉松として三種の松が紹介され、個体がある京都の社寺が挙げてあります。!
・ダイオウショウ(大王松:北米東南部原産)…大覚寺・水度神社
・テーダマツ(北米東南部原産)…上賀茂神社
・ハクショウ(シロマツ:中国原産)…城南宮(数年前の台風で倒木)
※なお、京都府立植物園には、上の三種は生立しているとのこと!

京都・上賀茂神社の細殿(ほそどの)前にある二つの立砂(たてずな)の頂点には、向かって右には二葉松、左には三葉松の松葉が立てられています。
記事では、二葉松は多分アカマツであるとし、三葉松は球果の特徴からテーダマツ(二の鳥居の左右に高木が生立)と断定してあります。

立砂の二葉松と三葉松の組み合わせは、陰・陽を踏んでいるに違いないと思っていますが、片方がテーダマツであったとは…。

実はテーダマツなら、通っている公園にテーダ松が植栽されていて、周りには松葉がたんと落ちています。
記事に触発されて、松葉を拾って確かめてみました。
確かに針葉は三本で、長さはなんと20cmもあります。
三葉松は身近なところにあったのに、気付かずにいただけだったのです。 (灯台下暗し!)

さて、高野山の「三鈷の松」です。
高野山のHPを見ると、囲いの中には二本の松の木が聳え立っています。
結論としては、一本は二葉松、もう一本は三葉松ということになります。

三葉松の下を探せば、間違いなく針葉三本の松葉をゲットできそうです…。 (^^)

キイジョウロウホトトギス【紀伊上臈杜鵑】が開花しました。

スマホの自撮りモードで下から撮った花の中です。