冬梅香
冬の土用は、今日から節分までの18日間。
20日からの大寒を経て、節分の翌日はいよいよ立春。
春はもう其処までやってきているようです。
花の兄、花の魁は梅。
梅を見る眼も、冬至梅から寒梅、探梅へ、そして春の梅見・観梅へと移り変わっていくようです。
そんな梅を見る、時の移ろいを題材にした組香が【冬梅香】。
志野流香道の組香目録の中で、組香名に「梅」の文字が入っているのは、【梅花香】【梅烟香】【松竹梅香】の三つ。
【梅花香】は香三種[一・二・ウ]で、出香は五包+一包の計六包を炷き出すもの。
【梅烟香】は香三種[梅・烟・香]で、出香は三包を炷き出すもの。
【松竹梅香】は香三種[松・竹・梅]で、出香は三包を炷き出すもの。(家元「聞香始」で行なわれた組香です)
組香【冬梅香】は、志野流香道の組香目録には入れられなかった、云わば外伝?の組香として「大外組」の中にあり、ネット上から取得することができます。
大外組【冬梅香】
◆香四種
月として 三包で無試
雪として 同断
冬として 同断
梅として 二包で内一包試
◆聞き方等
梅の試みを終えた後、出香十包を打ち交ぜ炷き出します。
梅は正聞き、他は十炷香のように聞きます。
梅の出により本香の下に名目があります。
初・二炷の内に梅出れば 冬至梅 と書く
三・四炷目に梅出れば 雪中探梅
五・六炷目に梅出れば 雪下寒梅
七・八炷目に梅出れば 梅枝待春
九・十炷目に梅出れば 南枝早苗早梅
銘々の聞きの中段には、
梅ばかり当り冬当たらざる人には 年内立春と書く
梅当らず冬ばかり当りたる人には 蝋梅
全の人には次の歌(伝書のまま)
ふりおける雪の下より匂ひ来て今はむめかと花もまよわず 雅親
無の人には次の歌(伝書のまま)
咲初る花はさながらうづもれて雪かきわけて梅の花おる
また、記の奥にはいづれも次の歌を書きます。(伝書のまま)
しらしらとしらけたる夜の月影に雪かきわけて梅のはな折
なお、記録紙の点数の処には、全当りには全、その他は点数です。
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なんだか雰囲気の有りそうな組香に感じられ、取り上げてはみたものの、和歌を見ると明らかに問題がありました。
なんと、上記太字の歌で、二番目と三番目の下の句が同じです!
単なる書き間違いなのでしょうか…。
出典を『新編国歌大観』(角川書店)で調べてみました。(^^)
結果は以下の通りです。
①『亜槐集』巻第三 春部 二八八
| 梅久薫 藤原朝臣雅親
降りおける雪の下よりにほひ来ていまはむめが枝色もまがはず
②『新千載和歌集』巻第一 春歌上 四七
|前大納言為家家に三首歌よみ侍りけるとき、梅花混雪といへる事をよめる 源兼氏朝臣
さきそむる花はさながらうづもれて雪のみにほふ梅の下風
③『撰集抄』 六七 公任の中将
しらじらししらけたる夜の月影に雪かき分けて梅の花折る
香道の組香に引かれている和歌の語句が変化していることはままあることのようです。
が、ちょっと…。
案外、「大外組」の「大外組」たる所以なのかもしれません。
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公園では、白梅、紅梅ともに咲き出しています。
※八重海棠
※紅珊瑚