中務の君に逢ってきました。
12月、師走に入りました。
師走と聞くと、頭に浮かんでくるのは矢張り大掃除。
あれもこれもと思うのですが、結局やりきれず、また来年!と自分に言い聞かせて年を越すのが例年のパターン。
今年こそ心機一転、きっちり方をつけたいと思っています。(今の所は…です。)
諏訪湖畔のサンリツ服部美術館で「佐竹本三十六歌仙絵 中務像」に逢ってきました。
同館で開催されている特別展「やまとうた 三十一文字で綴る和の情景」に出品されています。(~12月15日)
※サンリツ服部美術館玄関
※展覧会チラシ
昭和59年発行の『秘宝 三十六歌仙の流転』(日本放送出版協会)に収められている「中務」の歌仙絵は断簡そのものですが、今回展示されている「中務」歌仙絵は、表装が施された掛け軸となっていて、新たな美術品としての価値を一段と高めているように感じました。
※『秘宝 三十六歌仙の流転』(日本放送出版協会)より
表装については、詳しいことは解りませんが以下の感じでしょうか?
一文字:紫地二重蔓牡丹唐草金蘭(?)
中廻し:唐草文印金(石畳)-幹色-(?)
天 地:ほっけん【北絹・黄絹】-白茶色-(?)
全体として、天地・中廻し・一文字と同系色の見事なグラデーションで落ち着いた印象の表装になっていて、本紙の歌仙絵を引きたてているように感じました。
本紙は表面が滑らかで、発色も朱色など特によく残っていて、顔の表情もはっきりと見ることができました。(ガラス越しの遠目ですが…)
そうそう、巻き皺が全く目立たなかったことはちょっとした驚きでした…。
今回の展覧会はタイトルにあるように「やまとうた」が主題で、高野切、継色紙、寸松庵色紙などなど数多の「切」が展示されていました。
「切」の謂れや、書かれている「歌」を読んでいくだけでも楽しい特別展になっているように感じました。(^O^)
※美術館前の諏訪湖
もう一ヶ所、サンリツ服部美術館の隣にあるのが北澤美術館。
こちらでは、ガレ、ドーム、ラリックのアールヌーボーのガラス展が開催されていました。
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詩歌をちこち 【替寝覚香】
|①『為世集』110
| 竹間鶯
ね覚してまづぞ聞きつる軒ちかき 竹の茂みの鶯の声|②『為世集』16
| 聞時鳥
今は又夜ごとに鳴きてね覚する 人を待ちける時鳥かな|③『新拾遺和歌集』巻第五 秋歌下 490
| 百首歌たてまつりし時、雁 藤原雅冬朝臣
今よりの秋のねざめよいかならむ 初雁がねも鳴きてきにけり|④『続千載和歌集』巻第六 冬歌 634
| (題しらず) 為道朝臣
かよふらんこと浦人のね覚までおもひしられてなく千鳥かな*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
※藤原為世(ふじわらのためよ)
※藤原雅冬
※藤原為道(ふじわらのためみち)
【替寝覚香】は、四季を代表する鳥の鳴き声で寝覚めする情景を題材にして組まれているようです。
・四季の鳥は、春は鶯、夏は時鳥(郭公)、秋は初雁、冬は千鳥です。(^O^)
◆香四種
春として 四包で内一包試
夏として 同断
秋として 同断
冬として 同断
◆聞き方
試みを聞いた後、春夏秋冬それぞれ出香三包づつを結んだ計四結びを打ち交ぜ、一結びを取って内から一包をとりだし、残り三結びの九包に加えた計十包を打ち交ぜて炷きだします。(加えた一包は正聞きの客扱い)
◆記録紙
加えた一包(春夏秋冬の何れか一包)は鳥の名前で書かれます。
春と思えば 鶯
夏と思えば 郭公(ほととぎす)
秋と思えば 初雁
冬と思えば 千鳥
また、加えた一包の出により、本香の下には歌が記されるようです。