関防と落款

昨日は稽古納め、床には「無事」の横物が掛かりましたが、ひょんな経緯から関防(かんぼう)、落款(らっかん)、一文字の裂などについて、いろいろお話が弾みました。

あらためて、昨日のblogで用いた画賛の色紙を眺めてみますと、印が約束通りに捺してあることがわかりました。
「和楽全」の語は小堀卓厳師、笊(ざる)かむりの犬は仲春洋画伯による色紙(印刷)です。

※語の右肩に捺してあるのが「関防」の印で、その位置が初めであることを示しています。
※名の後に捺してあるのが所謂「落款」とよばれるもので、「成の識(かんし)」即ち、筆をとった人の(署名)印を表しています。

「落成」ができあがったことを意味しているのは分りますが、「款識」には馴染みがありません。

「款」は凹字(陰字)、「識」は凸字(陽字)のことと、辞書にはあります。

ちゃんと、陰と陽が踏んであるのですね…。

とは言え、巷にある掛物の全てがそうなっているわけではなく、「関防」が省略されていたり、「落款」の陰陽の順が逆になっていたり、あるいはどちらか片方だけだったり、はたまた幾つも捺されていたりと、実際はさまざまです。(中国の歴代皇帝は、名品には極めの意味で代ごとに印を捺したようですが…。)

◆掛物の表装に使われている一文字(いちもんじ)-本紙の上下に付ける細い布裂-には、名のある裂が使われることが多く、竹屋町裂はその代表的な裂の一つとなっていますが、竹屋町裂の着物や帯があるとの話が出たのにはビックリしました。(庶民には縁遠いお話です…。)

◆その一文字の幅について、以前何かの講演会でこんなことを聞いた覚えがあります。
下の一文字の幅を1とすると、上の一文字の幅は2、下の中廻しの幅は4、上の中廻しの幅は8、地の幅は16、天の幅は32の如くです。

あくまでもバランスの問題なので、必ず此の通りと決まっているわけではないでしょうが、一つの目安にはなりそうです。

ちょっとだけ盛り上がった?感じの掛物談義ではありました。