梅雨入り

今日は雑節の「入梅」。
黄経が80度となる日で、6月10日ごろとされている日です。(因みに、春分が横経0度、夏至が90度です。)
奇しくも、この日に合わせたかのように東海地方の梅雨入りが発表され、この先一週間の天気予報では曇りと雨マークの日々が続いています。

紫陽花の花が咲いています。
別名は、よひら【四片】。
くっきりとした四片の花弁は紫陽花の特徴をよく表していて、この時季のお菓子銘にも使われています。

紫陽花が雨に濡れる姿も、この時季ならではの風情で、水の国の潤いを感じさせてくれます。

ところで、この時季よく行われる組香の一つに「五月雨香」があります。
残念ながら、今年はコロナ禍のためにお香会はピタリと止まっていて、五月雨の音は聞こえてきません…。
2019.06.17付のブログ記事から引用します。

【五月雨香】

◆香は五種
春として 二包に認め無試
夏として 同断
秋として 同断
冬として 同断
五月雨として 二包に認め内一包試

◆聞き方と記録紙
試みを終え、出香九包を打ち交ぜて炷き出します。
春夏秋冬の香は無試なので、二炷ずつ「つるび」で聞き、五月雨の香は試みがあるので正聞きとなります。
記紙には聞いた順に春雨・夏雨・秋雨・冬雨とするので、記録紙では読み替えを行います。(執筆は名目に従って書き換えるので大変!)
聞きに応じて、以下の様な名目を書きます。
春雨 …初めの香を朧夜、次を花香
夏雨 …初めの香を白雨、次を薫風
秋雨 …初めの香を村雨、次を野分
冬雨 …初めの香を時雨、次を落葉(or
五月雨 …徒然

全当りの人には点数の所に五月雨、無聞の人には無梅雨と書きます。

[証歌]
村雨に時雨はる雨夕だちのけしきをそらにまがふ五月雨

◆メモ
和歌は[古歌]としてあり、出処となると『新編国歌大観』にも見当たらずはっきりしません。
歌の中には、村雨、時雨、はる雨、夕だち、五月雨と、季節の雨がたくさん詠み込まれています。

同じような雰囲気で、幾つかの「雨」が詠み込まれた歌を三つあげておきます。
①『近世歌学集成(中)』(明治書院)近世和歌研究会編
江戸時代中期『詞林拾葉』の中の歌として記されています。
五月雨は時雨夕立おりおりのけしきをそらに尽してぞふる (通堅)
②『香道への招待』(淡交社)北大路功光・北大路成子著
「五月雨香」の解説の中で「東福門院の和歌によるという伝書があるが調べ当らなかった」として、次の歌が記されています。
五月雨はしぐれ村雨夕立のけしきをさらにまじへてぞふる
③竹幽文庫蔵『香道籬之菊』
同志社大学の矢野環教授・福田智子教授による研究論文の中に「五月雨香」の解説があり、次の歌が記されています。
五月雨は時雨村雨夕立のけしきを空につくしてそ見る

いろいろです…。

組香の名目について、長ゆき『香道の作法と組香』(雄山閣)の「五月雨香」の解説から引用します。
「春の場合、俗に朧夜の翌日は雨とされ、また雨の後には花の香が漂う。夏の名目の白雨は夕立のことで、夕立が通り過ぎると薫風が吹く。秋の風物の村雨は、時には野分のような暴風雨となる。冬の典型的な雨は時雨、稀にになることも。嵐は文字を上下二分すると山風。五月雨の日々は、外歩きもままならず徒然となる。」

なんとも素晴らしく、すっかり書き尽くしてあります。(^^)

今日で梅雨入りとあらば、徒然?ついでに『群書類従』第十九集に収められている「五月雨日記」を読んでみるのも一興かもしれません。
この中には、文明十一年(1479)五月十二日に東山殿で執り行われた有名な「六番香合(こうあわせ)」の次第も収められています。