灰の真・行・草

日本の伝統文化である茶道・華道・香道には何かと真行草が付き物となっています。

『広辞苑』には「漢字書体の真書(楷書)・行書・草書の総称。転じて華道、連歌俳諧の付合(つけあい)、庭園、茶道、表具などで、「真」は正格、「草」は崩した風雅の形、「行」はその中間を指す」とあります。

茶道では、お辞儀の仕方に始まり、袱紗の捌き方、茶道具もろもろの格付けに真行草が付いてまわります。

香道でも真行草の格付けは処々あるようですが、個人的に興味を惹かれているのは香炉灰の真行草。

前々回に取り上げた新刊書『香道調度図・香道籬之菊』(淡交社)の中に興味深い灰押方の図①がありました。

※図①

上は「香道調度図」にある図で、変体かなの翻字は本の中に有りますが、著者のキャプションが特に付されていて、「真の灰押方は、今の御家流で行われているものである。」とあります。
真は、灰の面が五合に分かたれ小筋が付けられています。

図を見る限りでは、「此箸目はふとく付べし 賞翫の箸目といふ」と記されている太い箸目は一本で、御家流系統で見たことがあるV字形の二本の箸目ではありません。
どうなのでしょうか?

また、灰の押方については、古書『香道軌範』(蜂谷宗梧の書と云われる)にも真・行・草の図②が載っています。

※図②

真の灰押方は五合に分かたれていますが、良く見ると小筋の付け方が図①とは向きが違います。

なお、図にはありませんが、もう一つ灰の押方として「略灰」があるようです。

茶道と同様、香道でも各流派によって規矩作法はいろいろということでしょうか。(^O^)

暑かった夏の名残り、白い遠州槿がまだ咲いています。