八卦香

八卦の記号を用いて遊ぶ組香に「八卦香」があります。

◆香は四種
一として 二包で無試
二として 同断
三として 同断
客として 一包で無試

◆聞き方・書き方
全七包(無試)を打ち交ぜ、内一包を抜き取って残り六包を炷き出します。

二炷を一組とし、各組が同香か別香かを聞いて、答えは卦の図で書きます。

例えば1・2番目が同香と思えば、別香と思えば‐ ‐のように書きます。
同様に、3・4番目、5・6番目も、又は‐ ‐で書き表します。

答え方は、それらの記号を、順に下から上へと積み上げるようにして一つの卦を作り、その名称を付記します。

作られた卦は易経に基づく、乾(ケン)、兌(ダ)、離(リ)、震(シン)、巽(ソン)、坎(カン)、艮(ゴン)、坤(コン)の何れかになります。

(例)兌 … 1・2番目は同香、3・4番目は同香、5・6番目は別香を意味します。

◆当たりに応じて点数の所に書く名目
三つとも当たれば 亨(こう)
二つ当たれば   利(り)
一つだけ当たれば 貞(てい)

※元亨利貞(げんこうりてい)…『日本国語大辞典』には以下の説明があります。

①易経で乾の卦を説明することば。「元」を大、「亨」を通の意にとり、「元(おお)いに亨(とお)る。貞(ただ)しきに利あり」と読むのが通例。
②乾(天)の四徳。「元」は万物の始め、最高の善、「亨」は万物を生育し通達させる働き、「利」は万物の生育を遂げさせ、各々そのよろしきを得させる働き、「貞」は万物の生育を成就生育させる働き。四徳は春夏秋冬、または仁義礼智などに配当される。四巻でなる書籍の巻次にも用いる。

八卦香の点数の名目は、どうやら①に拠っているようです。

※蛇足ですが、二巻なら上下、三巻なら上中下、四巻なら元亨利貞、五巻なら仁礼信義智(仁義礼智信)とでもなるのでしょうか。(尤も、三巻なら天地人、四巻なら起承転結もありそうです。)

★八卦

八卦は古代中国から伝わる易の八つの基本図形です。

卦は、爻(こう)と呼ばれる記号(は陽爻、– –は陰爻)を三つ組み合わせたものです。

よく用いられる「後天八卦図」と、卦がかたどっている事象の代表的なものは以下のようです。

※八卦の配置(八卦盆)

乾(ケン)…西北
兌(ダ) …沢、西
離(リ) …
震(シン)…雷、東
巽(ソン)…風、東南
坎(カン)…
艮(ゴン)…山、東北
坤(コン)…、西南

なお、十二支[子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥]と八卦の方角配置から、は西北で即ち戌と亥の間であることから(いぬい)とも読みます。同様に、は東南で辰・巳の間で(たつみ)、は東北で丑・寅の間で(うしとら)、は未・申の間で(ひつじさる)とも。
これらは、十二支の配置が、子を北(坎の位置)にして時計回りに置かれていることからの読みとなっています。(下図参照)

八卦のルーツと云えば、太極→両儀(陽と陰– –)→四象→八卦というように、陰陽未分化の太極から1→2→4→8と分化して作られたのが八卦となっているようです。
両儀の、の上に– –を、– –の上に– –を積んだのが四象で、同様の操作をもう一回すれば八卦の記号となります。

[余談]
・京都御所には西北に乾門(いぬいもん)という門があります。文字通り天子が通う門という意味で、昔は行幸の際にはこの門を通ったとか…。
・早稲田大学の校歌には「都の西北、早稲田のもりに…」と詠われていますが、ひょっとしたら西北が意識されていたのかもしれません。
・艮は東北(鬼門)で丑・寅の間となっていることから、鬼は丑(牛)の角(つの)に、寅(虎)のしましまパンツの姿とも云われています。
・大相撲の行事の掛け声「ハッケヨイ」は四方八方まるく収まっているということでしょうか…。
・乾坤一擲(けんこんいってき)という語は、さいころを投げて天が出るか地が出るかを賭けること、の意味のようです。
・韓国の国旗は、中央に赤と青の巴を合わせた円の太極(宇宙)、左上右下に☰☷(乾坤)、右上左下に☵☲(坎離)が描かれています。

[方位関連図]