五福のわ

福岡市にある御菓子處・五島の干菓子「五福のわ」をいただきました。

淡い五色の飴の「わ」をテープで「わ」につないで、端をまるで兜のように結んである洒落たお菓子です。
一目で気に入りました。

五色と云えば、青・赤・黄・白・黒(or紫)が定番となっています。
五行では青・赤・黄・白・黒、お寺の法会垂れ幕では緑・黄・赤・白・紫のように捉えています。

五福は「人生の五つの幸福」のこと、『書経』にある寿・富・康寧・攸好徳・老終命のことのようです。
即ち、寿命の長いこと、財力の豊かなこと、無病なこと、徳を好むこと、天命をもって終わること、と国語辞書にはあります。

中国では「福」と「蝠」は音が通ずることから、五福の画題として五匹の蝙蝠(こうもり)を描いた絵があるようです。
日本では必ずしもピンときませんが、「蝠」は「福」に通じているというわけです。

うろ覚えですが、茶の湯で名を知られた県内M邸宅の欄間に、蝙蝠の透かし彫りがあったように記憶しています。

「五福のわ」からの連想で、「十団子」(とおだんご・とおだご)があるとの声が隣から聞こえてきました。

『日本国語大辞典』には、「静岡県宇津谷峠(うつのやとうげ)の麓の茶屋で売った名物の団子。白・赤・黄などに染めた小さな団子を10個ずつ竹串や麻糸に貫いたもの。また、茶屋の女が10個ずつ杓子ですくって売ったともいう。」とあります。

宇津ノ谷峠は、地図にもその名が載っている東海道の名所。
宿場町であった静岡市駿河区の丸子と藤枝市の岡部を繋ぐ東海道の峠となっていて、「伊勢物語」や「東海道五十三次」にも登場しています。

「伊勢物語」九段に、「行き々々て、駿河の国にいたりぬ。宇津の山にいたりて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに、つたかえでは茂り、物心ぼそく、すゞろなるめを見ることと思ふに、…」とあります。

歌川広重の「東海道五十三次之内 岡部 宇津の山之図」にも、茶店の「十団子」が描かれています。
図をみると、茶店には「名物 十うだん子」の看板がかかり、軒先には10個の団子を紐で連ねた「十団子」が吊り下げられています。
東海道の名物であったことが伝わってくる図です。(^^)

今でも、「十団子」は販売されているのでしょうか?

ネットを検索すると、とろろ汁で昔も今も有名な丸子の「丁子屋」HPに、「厄除け十団子、始めました」のタイトルで、毎年8月の慶龍寺の縁日で「十団子」を販売する旨の記事がありました。

慶龍寺には、宇津ノ谷峠を越える旅人が、鬼に合わぬようお参りしたという延命地蔵尊が安置されているそうです。
ネット上の同寺案内板には、寺の由来、鬼退治の話、厄除け十団子の謂れ、などが記してあります。

また、同寺には芭蕉の弟子・森川許六が詠んだ句の石碑が昭和57年に置かれたようです。

十団子(とおだご)も小粒になりぬ秋の風  許六

古道を歩き、宇津ノ谷峠のベンチに座って、東海道五十三次の図に描かれた峠の風情を、そして「十団子」のことを(併せて「五福のわ」のことも!)しみじみ味わってみるのも良いかもしれない…、と一瞬思ったのでした。(^O^)